左足と右足をスクエアに開き球は左足かかと延長戦上が基本のゴルフだが、田中理論は、右足をほぼ45度引いたクローズドスタンスにはじまり、基本はすべてフックスタンス。いうなればゴルフの基本をくしゃくしゃくしゃ、と思いっきり崩して迫力がある。
それでなんでまっすぐの球が出るのですか?と当然の疑問。だってフックスタンスならフックボールと昔からきまっている。だが、まあ、聞きなさい、とこんな考え方だ。
「クローズドスタンスでストレートボール。クローズ、フックに構えればドロー、フックだが、それをストレートに変えるにはちょっとした工夫をすれば簡単。それは後に置くとして田中スイングはまずクローズドスタンスが大前提。クローズドスタンスは安定したショットをするための土台。このスタンスは、パワーの源泉、さらに動きやすく効率的です。なぜか?三角形に立つクローズドスタンスは、四角に立つスクエアスタンスをしのぐ安定をもたらすからです」
やってみよう。両足をまず肩幅に開いた通常のスタンスから、球は左足かかと延長線上。次いで右足を引いてクローズに構える。実際、ドライバーを持ち、腰を落とし広めのスタンス幅のアドレスをとると、頭を頂点とし左足、右足、そして、ボールを結ぶ三角形を土台にした3角錐形が出来上がる。そうだ、頭を頂点とし、両足と球の位置の3点を結んだ人間ピラミッドだ。
3角錐、「さんかくすい」と読む。この構えこそ、田中名人のスイングの基本形。すべてのショットの基本、まさにすべて土台なのだ。田中さんはいう「皆さん、これまでスクエアスタンスを追求してスイングに納得がいきましたか?いいスコアが出ましたか?私はまっすぐな球を打つのに最適なスタンスと言われるスクエアをフックスタンスに変えてスイングが安定した。するとスコアも安定した」
代表的な世界遺産のピラミッドは四角の土台を持つ建造物だが、田中さんの土台は3つの土台。“4点スタンス”は動かない建物には向いているが、動きの必要とされるゴルフには向かない。「左足、右足そして球を結んだ三角形、さらに頭を結んだ三角錐形のピラミッドこそ、ゴルフスイングには最も適している」と声を大にするのだ。
次回はその実践、ストレートボールである。
◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。82歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。