上田桃子が故郷での大会で首位発進!復興進む熊本見て奮起


18番、バーディーパットを決めてガッツポーズを見せる上田桃子。3アンダーで単独トップとなった(カメラ・石田 順平)

18番、バーディーパットを決めてガッツポーズを見せる上田桃子。3アンダーで単独トップとなった(カメラ・石田 順平)

  ◆女子プロゴルフツアー KKT杯バンテリンレディス第1日(14日、熊本・熊本空港CC、6452ヤード=パー72)

 熊本出身の上田桃子(30)=かんぽ生命=が3バーディー、唯一のボギーなしの69で回り、3アンダーで15年6月以来の首位発進を決めた。1年前に大会中止に追い込んだ地震で実家を建て替えることになったが、懸命に前に進む熊本の人々の姿に奮起。2年ぶりに開催となった故郷での大会で14年11月以来のツアー通算12勝目を目指す。

 燃えるような熱気を含んだ大歓声が上がった。熊本出身の上田が1番でバーディー発進。2年ぶりの大会開催を待ちわびた地元ギャラリーが大きな拍手を送る。4番で3メートルのバーディーパットを沈めると、グリーン脇のファンも拳を握ってもり立てた。「見えないところで地元の力があったのかな」。ミスショットの多くが打ちやすい位置に。調子がよくなかった体も、不思議とよく動いた。

 火の国の女は、決してうつむかなかった。9番。第1打を左に曲げて木の根元へ。そこからフェードで出した球は、再び逆サイドの木の手前まで飛んだ。「今日は何があっても下を向かないと決めていた」。気持ちを切らさず、フックでグリーン奥に運んでナイスパーだ。平均ストローク76・213となった難コースで唯一のボギーなし。地元の期待に首位発進で応え「一日、疲れました」と息をついた。

 1年前、大会前日に熊本市内の実家で被災した。2週後にツアーに復帰しながら募金活動などに奔走したが、思い出の詰まった家は、台所が傾き、壁は崩れ、住めなくなっていた。建て替えを決め、昨年末に更地となった実家を訪問。幼い頃、夢中で球を打ったネットの面影もない。「すべてが消えた気がした」とショックを受けた。

 昨季はトップ5が一度だけで賞金ランク35位と不本意な1年に。だが、元気を与えるはずの故郷の人が、逆に勇気をくれた。オフに触れ合った親戚や友人が「やるしかないよ!」と笑って話す顔が忘れられない。「立ち止まっていたのは私だけ。みんな進んでいる。熊本(生まれ)でよかった」。今大会前に市内の1LDKのアパートで暮らす両親のもとを訪れた。家族5人、愛犬2匹と笑い合い「すごく狭いけど、家族といたかった。温かい空間で落ち着いた」という。

 07年の賞金女王は、14年11月から優勝が遠ざかる。両親が住む新居の予定地に行くと、土台ができつつあった。復興が終わっていないことはわかっているが、少しずつでも進むことが大切。「熊本の人の前では、しっかり前を向いてプレーしたい」。故郷を勇気づける1勝を届ける。(浜田 洋平)

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