宮里藍、涙 プロ生活14年「自分自身にお疲れさま」


 ◆米女子プロゴルフツアー今季メジャー最終戦エビアン選手権最終日(17日、フランス・エビアンリゾートGC=6479ヤード、パー71)

 【エビアン(フランス)17日=高橋宏磁】メジャー昇格前の09、11年大会覇者の宮里藍(32)=サントリー=は2バーディー、4ボギーの73で回り、通算1オーバーの32位で現役最後のラウンドを終えた。日本人最多となる通算53戦目の挑戦でメジャータイトルこそ届かなかったが、最終18番では功績をたたえられ涙。アンナ・ノードクイスト(スウェーデン)が通算9アンダーで並んだブリタニー・アルトマレ(米国)とのプレーオフを制して優勝した。

 感極まった。藍の両目から涙がこぼれ落ちた。最終18番。2メートルのパーパットを沈めると、グリーン上を拍手が包んだ。盟友であるヤニ・ツェン(台湾)らと抱き合うと、何度も涙を拭った。「パットを打つ前、ヤニやポーラ(クリーマー)がいるのが見えて泣きそうになった。見ないようにしました」。仲間やファンへの感謝、03年から重圧を背負って戦い続けた達成感。複雑な感情が脳裏を駆け巡った。

 日米通算24勝。10年には日本人初の世界ランク1位に輝いたヒロインにふさわしいフィナーレだった。グリーン脇ではゲーリー・プレーヤー(南アフリカ)が抱きしめて花束を贈呈した。メジャー通算9勝のレジェンドからは「おめでとう。頑張って」と日本語でエールを受けた。

 尊敬するアニカ・ソレンスタム(スウェーデン)がロープ外で見守った。「本当の意味で最後のラウンド。気持ちの部分で難しい部分もあった」とショットに苦しみ、73とスコアを落とした。それでも最難関の18番はパーで終えた。「私らしい終わり方ができた」

 引退後の予定は「来年ぐらいにやりたいことが出てくれば」と話すにとどめた。ただ関係者によると、ゴルフに恩返しをしたい気持ちが強く、米女子ツアーに関わる仕事をする可能性が高い。「自分にお疲れさまと言いたい。旅行をしたり、普通の生活を楽しみたい」

 現役復帰の可能性は「ゼロよりマイナス」としたが、ゴルフ界は「藍」を求めている。16日に行われたパーティーで、主催者は今大会の「終身アンバサダー」に任命すると発表。スピーチでは「ツアーでの旅は終わるけど、これで終わりではない」と話した。大会関係者は「記憶に残るスピーチだった」とたたえた。

 振り返ると、いつも父・優(まさる)さん(71)がいた。4歳からゴルフを教わった。「自分の意見をハッキリ言うことが大事だから」と幼少期から弁論の練習を課せられ、弁論大会に何度も出場。失職して貯金がないような状況でも、高価な英語の教材をプレゼントしてくれた。

 「父の存在なくして今の自分はない。ゴルフ以外にも見習うことが多い」。最愛の父は今、闘病中だ。最終戦を見届けることもできなかった。今後は父のサポートに全力を注ぐ。大会後は一度米国に戻った後、看病のために今月中に帰国する予定だ。世界中で愛されたスーパースターは、ツアーを離れ1人の娘に戻る。

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