◆男子プロゴルフシニアツアーファンケルクラシック 第1日(17日、静岡・裾野CC=7009ヤード、パー72)
アマチュア枠で大会に初出場したプロ野球・巨人の原辰徳前監督(60)=ファンケル=は、2バーディー、6ボギー、1ダブルボギーの6オーバー、78で回り、出場選手75人中68位スタートとなった。スタートホールでは「4番サード、原!」のアナウンスが流れ、コース周辺は若大将お目当ての「辰徳渋滞」が発生。同組で回った中嶋常幸(63)=静ヒルズCC=は「(野球ではなく)ゴルフを選んでいたらメジャーに出る選手になっていた」と絶賛するなど成績以上の存在感を発揮した。レギュラーツアーで2度、賞金王(2001、03年)に輝き、今季からシニアツアーに参戦する伊澤利光(50)=フリー=が8アンダーで首位に立った。
選手として監督としてプロ野球界で輝かしい実績を持つ男も裾野CCのティーグラウンドに立つ以上、ゴルフの一競技者の「原辰徳」。原さんは全力で歴戦のプロに挑んだ。「出た結果が僕のベスト。自分の中では戦うことができた。野球で言えば4打数1安打かな」。6オーバーの78、75人中68位で初日を終え、爽やかに振り返った。
スタート前からギャラリーを沸かせた。注目の1番パー4。「ファンケルクラシックに初出場、4番サード、原!」の紹介アナウンスが流れると、大歓声が沸き起こった。ドライバーで放った第1打は左サイドのフェアウェーをキープ。さらに大きな歓声を沸き起こした。同組の中嶋を約5ヤード、芹澤信雄(58)=TSIグルーヴアンドスポーツ=を約20ヤード置き去りにした。大会前、中嶋は「昔のオレだったら『かかって来い!』と言えるけど、今は『お願いだから忖度(そんたく)してね』という感じ」と冗談交じりに話していたが、忖度なしのホームラン級の豪打だった。
残り約100ヤードの第2打はハーフトップして“ホームラン”。グリーンオーバーさせたが、第3打、ラフからのアプローチを約70センチに寄せて無難にパー発進した。その後、2番でダブルボギー、3番、5番でボギーをたたく苦しい展開。しかし、クラブハウス前で大ギャラリーが見守る9番パー5で千両役者ぶりを見せた。残り100ヤードの第3打をピン左手前に乗せて「お先に」バーディー。同組の芹澤らと満面の笑みでトレードマークのグータッチをした。
16番パー4では第1打を左に大きく曲げるミスショット。野球で言えば三塁側スタンドに飛び込む“特大ファウル”を放ち、左崖下へ。第2打でフェアウェーまで戻せず、ボギーをたたいた。好プレー、珍プレーありの18ホール。「最高の舞台だった。日本シリーズと同じくらい」と振り返った。
原さんは7月28~29日に熊本・コスギリゾート阿蘇ハイランドで行われた熊本・阿蘇シニアオープンでシニアツアーに初参戦し、通算2オーバーの59位だった。この日も7000ヤードを超えるプロ設定で6オーバーと踏ん張り、野球界NO1の腕前を見せつけた。レギュラー48勝、シニア5勝の中嶋はその潜在能力を高く評価した。「スマートでクール。もし(野球ではなく)ゴルフを選んでいればメジャーに出る選手になっていた」と絶賛。中嶋の評価について原は「ありがたくちょうだいします」と笑った。
人気は絶大。原、中嶋、芹澤組を大ギャラリーが追いかけた。「原辰徳8」と記された巨人時代のタオルマフラーを掲げるファンも出現。さらにコース外では若大将をひと目見ようと「辰徳渋滞」が発生。裾野CCの手前約3キロから車が列をなした。「今まで、ここでこんな渋滞は見たことない」と地元のタクシー運転手もびっくりの盛況だった。
実は、熊本・阿蘇シニアオープンでは「2番サード、原!」とアナウンスされていたが、この日の紹介は「4番サード、原!」。「やっぱり、気分は悪くないね」とニヤリ。今大会は予選落ちがないため、全選手が3日間を戦う。大会前には「僕の中では今回が最後です。本が一冊書けるくらいの戦いをしたい」とコメント。“ゴルフ戦記”は第1章から波乱万丈、ドラマチックだった。