前代未聞 優勝を争う古江彩佳の3ウッドをJGA幹部の乗ったカートがへし折る 日本女子アマ最終R


折られた古江彩佳の3ウッド

折られた古江彩佳の3ウッド

 ◇女子ゴルフ日本女子アマチュア選手権<最終日>(28日、愛媛・エリエールGC松山=6536ヤード、パー72)

 アマチュア女子日本一を決める歴史と伝統のある第61回大会で、前代未聞のアクシデントが起こった。3打差3位で最終組で出た、古江彩佳(19)=JGAプレミアム会員=が、4打差の首位を追いかけていた10番プレー中だ。カートに積んであった3ウッドと、猛スピードで追い抜こうとした日本ゴルフ協会(JGA)の山中博専務理事(56)が運転するカートが接触。「ガシャン」という音とともに、3ウッドが真っ二つにへし折れた。

 古江が気付いて近寄ると、「シャフトの真ん中あたりから、ヘッドカバーごとヘッドが落ちていた」という。ところが、JGA幹部の乗ったカートは気付かずに通り過ぎ「カートが当たって折れたんですけど」と、古江は肩を震わせてカートを追いかけた。山中専務理事は事態を把握して謝罪。古江はその怒りを力に変え、5メートルをねじ込んでバーディーを奪った。

 バッグの中のクラブが1本減って13本で迎えた、533ヤードの11番パー5。古江は競技員に、スペアの3ウッドが車に積んであることを伝えた。母・ひとみさんがカートで、駐車場からスペアの3ウッドを取って来るのを第2打地点でしばらく待った。第2打で、使い慣れていない真新しい3ウッドを使うも「トップしちゃって、思い通りの球は打てませんでした」とラフへ。このホールはパーで追撃及ばず。

 それでも懸命にプレーを続けて13、14番ではバーディーを奪った。「許せることではないかな。特に好きなクラブで、1年以上愛用してきて。打つ時だけは集中できましたけど、自分のプレーよりも悲しくなってきてしまって。涙も出て来て…」と報道陣の前で声を絞り出した。アマチュアの日本タイトルのかかる大会はこれが最後。4打差の5位に終わり「全て自分の責任」と古江は気丈に現実を受け止めた。

 山中専務理事はスコア提出後に再度、古江と母・ひとみさんに謝罪した。報道陣の取材にも応じ「最後の女子アマの最終組で。彼女の精神的なショック考えると本当に痛恨。起きてしまったことはもう戻せないですが、とんでもないことをしてしまった」と厳しい表情で陳謝した。

 今大会で優勝すればプロテストの1次、2次は免除で最終からという大きな特典や、メーカーなどとスポンサー契約を結ぶ際の「日本アマタイトル保持者」としてのインセンティブ契約料もあった。古江の人生を変えてしまったのでは? という報道陣の質問に対し「変わってしまったと思います」とうなずいた。今後の対応については「全て私の責任です。謝罪文を出させて頂きます」と話した。

 古江は次戦、7月3日開幕のステップアップツアー、スカイレディースABC杯(兵庫・ABCGC)に出場予定。折れた3ウッドが、それまでに直るかは不明だが「(今大会と同じく)優勝すれば、プロテストの最終まで行けるので、頑張ります」と19歳は再出発を誓った。

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