◆女子プロゴルフツアー 大王製紙エリエールレディス最終日(24日、愛媛・エリエールGC松山=6580ヤード、パー72)
2打差7位から出た、賞金ランク3位の渋野日向子(21)=RSK山陽放送=が6バーディー、ボギーなしの66で回り、通算19アンダーで涙の逆転優勝。同ランク首位の鈴木愛(25)=セールスフォース=との同組対決を制して国内4勝目で、優勝賞金1800万円を獲得し、約1511万円差に迫った。次週の最終戦、ツアー選手権リコーカップ(28日開幕)では、単独2位以上が最年少女王(21歳16日)への最低条件。“スマイル・シンデレラ”が大逆転を狙う。
プレーオフに備え、パット練習していた渋野に吉報が舞い込んだ。キャディーと抱き合うと「もう涙が止まらなかった」。最終日の逆転は日米5勝中3勝目。9月以来、国内7戦ぶり優勝を手にし「2打差だから勝ちたいと思って、ノーボギーでこのスコア。先週の予選落ちは無駄じゃなかった」と興奮気味に語った。
今季7勝で3週連続優勝中の鈴木と壮絶なデッドヒートを演じた。両者並んで迎え、ともにチャンスにつけた15番、4メートルを先に決めた渋野に対し、鈴木が1メートル半を失敗。17番で鈴木が池ポチャのボギーで勝負あった。伸ばし合いで、AIG全英女子オープン優勝を1打更新する自身最多アンダーパー。見守った青木翔コーチ(36)は「ボクシングの殴り合いのよう」と評した。18番プレー中から雨と突風が吹き、2組後ろの最終組で追う森田(4位)が17、18番で連続ボギーと天も味方。04年に5勝を挙げた宮里藍以来となるルーキーイヤー4勝を手にした。
前週、3月以来の予選落ちを喫したことが流れを好転させた。週末に兵庫でコーチと練習し「ジュニアの子たちと触れ合って初心に帰れた」。地元・岡山では応援してくれる人たちから「今まで当たり前のように予選通過してくれてありがとう」と感謝された。「一日でいろんなことを思い出させてくれた。自分のためではなく、あと2戦、皆さんのために頑張ろう」と決意。この日、自宅でテレビ観戦した母・伸子さんは「自分を見つめ直す、良い期間だったのでは」と思いやった。
今大会と同じ四国で行われた、3月のPRGRレディス(高知、6位)では、目前で鈴木の優勝を見せられた。同じ用具メーカーで、世界ランクでも渋野が15位、鈴木が17位と来夏の東京五輪出場枠を争う相手でもある。「その時は私が自滅した。成長している実感は湧きます」と控えめに喜んだ。大会前から「考えない」と繰り返す女王争いでも、鈴木と約1511万円差に肉薄。過去に2週連続Vで最終戦で逆転女王となった例はなく、史上初の偉業に挑む。最低条件は単独2位以上。泣いても笑っても今年最後となる。「来週も自分のプレーができたら、結果はついてくる。良い締めくくりができれば」と力を込めた。(岩原 正幸)
◆最終戦の賞金女王争いの行方
▽鈴木の女王条件
〈1〉単独2位以上〈2〉申、渋野が3位以下
▽申の女王条件
〈1〉優勝して鈴木が3位以下。
〈2〉2位で鈴木が4位以下&渋野が3位以下
▽渋野の女王条件
〈1〉優勝して鈴木が3位以下&申が2位以下。〈2〉2位で鈴木が10位以下&申が3位以下
◆リコーカップの賞金 出場選手は優勝者と賞金ランク上位などに限られ、優勝は3000万円、2位が1740万円、3位が1200万円。10位は196万8000円、20位は60万円。最下位の32位は45万6000円となっている。