賞金女王が決定した瞬間に、奥嶋誠昭コーチ（左）と喜ぶ稲見萌寧（カメラ・馬場 秀則）
◆報知新聞社後援 ▽女子プロゴルフツアー メジャー最終戦 ＪＬＰＧＡツアー選手権リコー杯 最終日（２８日、宮崎・宮崎ＣＣ＝６５４３ヤード、パー７２）
稲見萌寧（２２）＝都築電気＝が約８４５万円差で自身初の賞金女王に輝き、涙した。７３で回り通算イーブンパーの９位。今季は初メジャーを含む９勝を挙げ、８月の東京五輪で男女通じて競技初の銀メダル獲得と「１００点」のシーズンを送った。新型コロナ禍により昨年と統合された長いシーズンで、今年１０月以降は腰痛に見舞われ、賞金ランク２位となった古江彩佳（２１）＝富士通＝の猛追を受けたが、２００７年上田桃子の２１歳１５６日に次ぐ、２２歳１２２日で年少２位の女王の座についた。１８年オフから稲見を指導する奥嶋誠昭コーチ（４１）が今年の躍進ぶりを語った。１１試合戦った昨年、ショットの調子を崩した“副産物”でショートゲームが向上したことを、女王に輝いた要因に挙げた。
最終戦で東京五輪以来のキャディーを務めた奥嶋コーチは、「ストレートに『おめでとう』と言いました。（コロナ禍で）２年間、通常よりも長い。その分、思いもある」とねぎらった。
３月の今年初戦前は「心配しかなかった」が、５月までに５勝し、「意外と成績が伴った。パットが入り始めたらこうなるなというのはあった」と分析。「アドレスだけでもきれいにやろう」と、真っすぐパターを引くように練習用マットを繰り返しなぞった。
“けがの功名”だった。昨年は「１回勝ったけど、ショットがめちゃくちゃ」という状態。だが、グリーンを外す場面が増えたことで、「アプローチ、パターがうまくなった」と評した。１９年はパーオン率で歴代１位の７８・２０７９％。一方、平均パット数は１・８３１２（４３位）と、“取りこぼし”があった。今季はパーオン率７５・７６８８％（１位）、平均パット数で１・７６６６（２位）と向上した。
今週は初日２５位と出遅れ、ショットだけでなく、グリーン上で悩んでいた稲見から、２日目後に「相談できなくて苦しいです」と、ＬＩＮＥが届いた。「３、４日目はお互いの意見が合うまで（パッティングの）相談をすると決めていた」とコーチ。稲見の判断に任せていたライン読みを共に行い、１桁順位にまとめた。
五輪の銀メダルで５年シードを獲得し、９勝を挙げる華々しいシーズンを支えた。今後に向け「１勝でも多く、１円でも多く稼ぐのがプロの宿命。日本にいてもいろいろな経験をすると思う。物足りなくなった時、（海外に）行ってもいいかなという気持ちになった時、シードを行使して挑戦すればいい」と、思いを語った。（岩原 正幸）