古江彩佳、「大胆」な決断と「ミリ単位」の調整力が生んだ実りの秋


来季は米ツアーに挑戦する古江彩佳

来季は米ツアーに挑戦する古江彩佳

 米女子ゴルフツアーの来季の出場資格を争う最終予選会の第2週最終日が12日、アラバマ州ハイランドオークスGCで行われ、5位から出た古江彩佳(富士通)が70で通算18アンダー7位に入り、来季のツアー出場権をつかんだ。古江が契約を結ぶブリヂストンスポーツで、2019年のプロ転向時からクラブを担当する阿部貴史さんが、調子を上げてきた今秋以降に訪れた2つの契機を語った。

 古江は今年9月の国内ツアー、住友レディス東海クラシック(41位)で、同社の今秋発売の新ドライバー「B1」を投入すると決めた。昨年11月の大王製紙エリエールレディス以降、今年は勝利から遠ざかり、もがいていた。6月に一度試打したものだったが、古江から「曲がり幅が少なかった気がする」と連絡が入った。「状態がいいときは呼ばれません」と話す阿部さんは、同週の練習ラウンドに新ドライバーを持参した。打ってみると「やっぱり曲がらない」。古江に迷いはなかった。「気分転換もあったのかな」と阿部さんは推し量るが、アマチュア時代以来、約3年ぶりにドライバーを変更する大胆な決断だった。

 今年初勝利を飾った10月の富士通レディース前にはティーショットで微調整を試みた。古江の抜群の安定を支えるのが、その繊細さだ。「少しヒールめに当たっている感じ」とミリ単位の違和感が悩みの種だった。阿部さんは「良かった時のデータは持っている」と、弾道計測器・トラックマンでスイングの数値を測定した。「打ち出し角が低く、初速で1~1・5メートル落ちていた」。違和感の原因を理解した古江は、ティーアップを「ほんのちょっと数ミリ」程度高くした。見た感じは微妙な修正だが、「打ち出し角とスピン量が適正になり、初速が上がった。いい感じに球が飛び出していた」といい時の感覚が戻った。

 古江のスイングの強みは「一定」であることだ。阿部さんは「(クラブの)入り方がちょっと男性に多い感じ。(女子選手は)よく手元が浮くと言うけど、古江選手はテイクバック時と振り下ろしたときで同じ動きをして、同じところを通るんです。正確なショットが打てる仕組みになっている」と説明する。だからこそ、「振りではなく、ボールとの距離などちょっとした意識を変えることで飛躍的に改善される」と繊細な感覚が安定感を支えている。

 富士通レディースで約11か月ぶり優勝を挙げると、NOBUTA GROUPマスターズGCレディースで2週連続V。その2週後のTOTOジャパンクラシックも制した“秋女”は今季国内で総合的な活躍度を評価するメルセデス・ランク1位となり、3年シードを獲得。米女子ツアー挑戦に弾みをつけた。憧れは、同じブリヂストンスポーツの契約プロで元世界ランク1位の宮里藍さん。2022年、小さい頃から描いてきた世界最高峰の舞台で、思う存分、その力を発揮する。(宮下 京香)

最新のカテゴリー記事