男子ゴルフの2022年メジャー初戦、マスターズは4月7日から4日間、米ジョージア州オーガスタナショナルGC(7510ヤード、パー72)で開催される。年に一度の「ゴルフの祭典」開幕前に知っておいて損は無い、マスターズに関する豆知識をご紹介する。
▽チケットが高い 世襲制で「パトロン」と呼ばれるオーガスタナショナルGCの会員や地元住民などが大半を毎年購入。12年からは抽選で一般発売も行われており、1日券は100ドル(約1万1000円)。周辺の路上にはダフ屋も出没し、4日間通し券の相場は1000ドル(約11万円)以上とも言われている。
▽ホテル代も高い コース近隣のホテルは、マスターズウィークは1年間で最も値上がり。出場選手に、レンタルハウスとして毎年貸し出している家もある。弊社の定宿も大会前週は1泊税込み72ドルだが、今週は1泊税込み350~400ドルまで高騰する。
▽オーガスタナショナルGCの飲食物は安い コース内の売店ではコーヒー1杯1・5ドル、ビール1杯4ドル。ホットドッグ1個1・5ドルとメジャーでは、最も安価な価格設定となっている。ただし、今年はロシアのウクライナ侵攻や世界的な物価高の影響で値上がり説もささやかれている。
▽携帯電話禁止 プレーを最優先するため、オーガスタナショナルGC内には、観客も報道陣も持ち込みが禁止されている。持ち込みが見つかれば即刻退場処分となる。報道陣はそれ以降、未来永劫大会取材やコースへの立ち入りが禁じられる。米国内通話は無料の公衆電話がコース内に8か所設置されており、ラウンド観戦中に家族や友人と会話を楽しむパトロンや会社にプレーの様子を報告する報道陣の姿などが見かけられる。また、コース内で走ることも禁止されている。毎年、大勢のパトロンが世界中から詰めかけるため、幾重もの人だかりの中で、人気選手の組のプレーをついて歩いて観戦するのは至難の業とも言える。
▽キャディーの番号 各選手のキャディーが着る、白いつなぎの左胸には緑色で数字が入っている。前年度優勝者は「1」。その他は会場入りした出場登録順となっている。松山が昨年大会を制した時は、早藤将太キャディーがつけていたのは「78」。松山はそのラッキーナンバーを今季のボールナンバーに採用している。
▽広告なし 他の3大メジャー大会では、観客席の壁などにスポンサー企業の広告看板が目立つ。ピンク色に咲き誇るアザレア(西洋つつじ)の花に、綺麗に刈られた緑のじゅうたんが一面に敷き詰められ、「世界一美しい」と呼ばれる景観を生かすため、オーガスタナショナルGC内に広告は一切ない。
▽激しいアップダウン グリーン周りに起伏が施され、18ホールアンジュレーションは大きい。最も高低差の激しい打ち下ろしの10番は「自由の女神の高さと同じ」約46メートルも高低差がある。松山の元相棒・進藤大典キャディーはかつて「歩くのは世界で一番しんどいコースです」と証言。実際、ティーグラウンドからグリーンまでせり上がってくる最終18番では、息絶え絶えのキャディーの姿がよく見受けられている。09年に4位に入った片山晋呉も「練習ラウンドを多くし過ぎると、想像以上の疲労が体に蓄積する」と話していた。
▽グリーンジャケット オーガスタナショナルGCのメンバーが1937年から着用を始めた緑色のブレザー。「名誉会員」として迎えるとの趣旨で、49年大会のサム・スニード(米国)から表彰式で優勝者に与えられるようになった。表彰式で前年覇者が新王者に着せる儀式が有名。正式名称は「グリーンコート」で、左の胸ポケットにコースのエンブレムが縫いつけられ、ボタンは3つ、デザインはシングル。オーガスタGC以外での着用は原則NGとされている。
▽クロウズネスト クラブハウス屋根裏にある簡易宿泊施設の通称(カラスの巣)。大会中はアマチュア選手が優先的に泊まることができる。緑のじゅうたんと白い壁に囲まれ、ベッドは緑の毛布に純白のシーツ。1泊7~12ドルという。タイガー・ウッズも初出場の1995年に泊まり、金谷拓実が2019年大会で日本人で初めて宿泊した。
◇パー3コンテスト 1960年から本戦前日の水曜日に、練習場脇に位置するショートコース9ホール(1060ヤード、パー27)を利用して開催される恒例イベント。1975、81年に青木功が、88年には中嶋常幸が優勝。「優勝者はその年の本戦で勝てない」というジンクスが有名だ。02年には伊澤利光が5、6番で連続ホールインワンを記録。家族や有名人をキャディーに起用する例が多く、18年と19年大会では小平智が、妻で元賞金女王の古閑美保を相棒に起用して、9番でティーショットを打たせるなど観客を盛り上げた。
◇名誉スターター 初日第1組のスタート前に行われる「始球式」で、1番でティーショットを放つ選手のこと。現役を引退した偉大な選手からマスターズ委員会が選ぶ。1963年にジョック・ハッチンソン(英国)で始まり、その後はフレッド・マクロード(米国)、バイロン・ネルソン(米国)、ジーン・サラゼン(米国)、ケン・ベンチュリ(米国)、サム・スニード(米国)などが務めている。今大会はジャック・ニクラウス(米国)、ゲーリー・プレイヤー(南アフリカ)の2人に加え、77年&81年大会覇者のトム・ワトソン(米国)が初参加する。
◇コース改造 今年から11番パー4と15番パー5の距離が延びた。昨年の難易度2番だった11番は15ヤード、昨年の第3日に松山がイーグルを奪った15番は20ヤード延長された。ともに第2打で握るクラブの番手が大きくなり、難易度は上がると予想されている。これにより、コースの全長も過去最長の7510ヤードとなった。