◆女子プロゴルフツアー ▽KKT杯バンテリンレディス 最終日(16日、熊本・熊本空港CC=6523ヤード、パー72)
20歳の岩井明愛(あきえ)が、国内トップツアーで男女通じて史上初の双子Vを達成した。2バーディー、2ボギーの72で回り、通算7アンダーで1打差を逆転し、初優勝。妹は昨季2勝の千怜(ちさと、ともにホンダ)で今大会は14位だった。日本ツアーの姉妹での優勝は福嶋晃子、浩子と堀奈津佳、琴音に次ぎ3組目となった。
30センチのウィニングパットを慎重に沈めた明愛の目から、みるみる涙があふれた。妹の千怜の姿が目に入った。抱き合い一緒に、また泣いた。「ホッとしているのと、うれしい気持ちと。こうやって優勝して、千怜が来てくれたことが信じられないというか。本当にうれしい気持ち」。史上初の双子優勝という偉業を、逆転で飾った。
1打差を追って出た最終日。耐えて耐えての粘り勝ちだった。前半終了時、トップの申ジエとの差は3打に開いた。「勝つんだ」。挑戦者の精神で向かった。10番で125ヤードの第2打をピン下2メートルにつけてバーディー。13番の申のボギーで、逆に1打のリードを奪うと、パーを重ねて逃げ切った。
飛距離を生かした攻めのゴルフが身上だ。以前は気持ちが前のめりになりがちだったが、この日は違った。「自分のプレーだけに集中した」。“キョロキョロ戦法”で心を落ち着かせた。「一点に集中しないように。のめり込まないように」。4番の1メートル弱のパーパットを打つ前も、ギャラリーを1周見渡した。
昨年8月に妹が、史上3人目の初Vからの2週連続優勝を成し遂げた。「次はあなたの番ね」の声が、自然と耳に届いた。母・恵美子さん(48)は「口には出さなかったけど、悔しかったはず。千怜にできたんだから自分もできるという思いはあったと思う」と代弁した。明愛にとって千怜は「一番近い存在の仲間」。同じゴルファーとしてツアーを転戦するなかで「いてくれてよかった」と思うことは毎日だという。「双子なので、片割れが頑張っていると自分も頑張ろうと思う。活力になる」
中学生の時だった。当時は髪形も同じだった。友人たちと「クラスを交換しても分からないんじゃないか」と盛り上がり、実行した。授業開始から10分。入れ替わりに気づいた教師から「お前、誰だよ!」と怒られたことも、今となってはいい思い出だ。「日本でお互いに何勝かして、いずれは海外で2人で活躍したい」。下の名前で呼ぶのは恥ずかしいと、お互い「岩井さん」「岩井ちゃん」と呼び合う2人の切磋琢磨(せっさたくま)は、これからも続いていく。(高木 恵)
◆主な双子アスリート
▽宗兄弟(マラソン男子) 兄・茂、弟・猛はともに1970~80年代に瀬古利彦らと活躍。茂は五輪は76年モントリオール大会20位、日本がボイコットした80年モスクワ大会は代表に選出された。84年ロサンゼルス大会はともに出場し、猛が4位、茂は17位。
▽荻原兄弟(ノルディックスキー複合) 兄・健司は92年アルベールビル、94年リレハンメルの両五輪団体で連覇。98年長野では弟・次晴と兄弟同時出場し、団体5位。
▽佐藤兄弟(サッカー) 兄・勇人はJ1千葉などでMF、弟・寿人は広島などでFWとして活躍。日本代表は兄が1試合、弟が31試合出場。06年8月のイエメン戦では日本代表で兄弟同時出場も果たした。
▽湯元兄弟(レスリングフリースタイル男子) 兄・健一、弟・進一は12年ロンドン大会にこの競技で日本初の五輪同時出場。兄は08年北京大会の60キロ級で銀メダル。弟は12年大会で55キロ級銅。