◆女子プロゴルフツアー パナソニックオープン 最終日(30日、千葉・浜野GC=6656ヤード、パー72)
単独首位で出たツアー屈指の飛ばし屋・穴井詩(らら、35)=ゴルフ5=が4バーディー、3ボギーの71で回り、通算10アンダーで今季2勝目&通算5勝目を挙げた。18番パー5でバーディーを奪い、通算2勝の永峰咲希(28)=ニトリ=を1差で振り切った。自身初めて年間ポイント&賞金ランク首位に浮上。メジャー初制覇がかかる4日開幕のワールドレディスサロンパスカップ(茨城GC西C=報知新聞社後援)へ弾みをつけた。
穴井は自信を持って球の行方を見届けた。18番パー5。82ヤードから58度のウェッジでの第3打はピン上2メートル半に落ち、バックスピンで30センチに寄った。「バッチリ」のウィニングショットで、先にホールアウトしていた永峰を1打振り切った。「すごくうれしい。完璧な球を打ったので、それにも満足している」。ヤマハレディースに続く、自身初のシーズン複数回優勝だった。
最大瞬間風速は14・4メートル。雨も降る難しいコンディションの中、ベテランはじっと勝負どころを待った。16番の右ラフからの第2打は、グリーン上で1バウンドしてピンを直撃。奥3メートルに止まったラッキーを無駄にはしなかった。スライスラインをねじ込み、ガッツポーズを作った。キャディーを務めた石井雄二コーチは「16番のグリーンから彼女の集中力が一気に上がった」と驚きを隠さなかった。
年齢による体の変化は否めない。以前は一日寝れば体力は回復したが、今は疲労が残る。集中力の持続に衰えを感じることもある。心身のスタミナ温存へ、秘策があった。石井コーチに「一番日常でリラックスするのはいつ?」と聞かれた。「お風呂に入っている時間が好きです」と答えた。お気に入りの「きき湯ファインヒート」の入浴剤を入れた湯船につかる1時間が至福の時。「お風呂から出て、そのまま打つような気分で打てば?」。助言を生かし「昔より最後まで集中力が持つようになった」。
小学5年でクラブを握り、中学2年で父・幸二さんが日本語学校教師として派遣された米国に渡った。「ゴルフは女性にもプロの道があり、長くできる。お前は将来、プロゴルファーになるんだ」と幼少の頃から言い聞かされて育ったという。今季9戦中4戦で30代が優勝とベテラン勢の活躍が続いている。35歳の穴井は年間ポイント&賞金ランクでともにトップに立ち、88年のツアー制施行後年長4番目の年間女王戴冠を視界に捉えた。
次なるターゲットは4日開幕のメジャー初戦、ワールドレディスサロンパスカップだ。「いい状態でメジャーに入っていける。年初めに『目標は?』と聞かれたら『メジャー優勝』と答えてきた。一つ目のメジャーなので、できれば取りたい」。飛距離と経験を生かし、初のメジャー取りに挑む。(高木 恵)
◆穴井 詩(あない・らら)1987年11月11日、愛知・岡崎市生まれ。35歳。11歳でゴルフを始める。昨季の平均飛距離257・49ヤードはツアー1位。2012年に46位で初の賞金シード入り後、16年ゴルフ5レディスで初優勝など通算5勝し、11季連続でシードを獲得中。井上陽水の曲をギターで弾く趣味を持つ父が「音楽好きになってほしい」と願い命名。165センチ、58キロ。家族は両親、兄、姉。