◆女子プロゴルフツアー メジャー初戦 ワールドレディスサロンパスカップ 第2日(5日、茨城GC西C=6780ヤード、パー72、報知新聞社後援)
1打差2位から出たツアー2勝の吉田優利(23)=エプソン=が5バーディー、2ボギーの69で回り、通算4アンダーで単独トップに浮上した。「こどもの日」に多くのジュニアゴルファーが見守る中、「吉田優利みたいになりたいと思われるプロでいたい」とメジャー初優勝に意欲。昨年2位5回だった“シルバーコレクター”を大舞台で返上する。4打差2位に、小祝さくら(25)=ニトリ=ら2人。
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不規則な風、深いラフに高速グリーン。23歳の吉田がメジャーの難セッティングを攻略した。平均スコアは77・069、通算アンダーパーは自身だけ。「昨日(4日)と同じくらい感覚がよかった」。最終9番、ピン奥6メートルからのバーディーパットをねじ込むとポーカーフェースが、柔和な笑みに変わった。
開始10番で3メートルのバーディー。序盤のピンチをしぶといパーパットで耐えると、17番で2メートル、18番は5メートル、1番でも2・5メートルの3連続バーディーだ。「前半から良いリズムで回れた」。5、6番でショットが乱れ連続ボギーも7番で4メートルのパーセーブ。「ライン取り、球の回転、スピード」と自らが定めるパッティングの3大要素がかみ合い、崩れない強さがあった。
「こどもの日」には1万人近くのギャラリーが詰めかけた。その視線が背中を押してくれた。「ジュニアの子に、吉田優利みたいになりたいと思ってもらえるようなプロでいたい。人としても魅せられるように」。自身もジュニア時代、上田桃子やテレサ・ルー(台湾)に憧れて努力した。アマだった19年に、この大会で4位と健闘して注目を浴び、「一番好きな大会」でもある。
昨年はツアー2位となるトップ10入り19回。メルセデス・ランクも6位と安定感が光った一方で、試合は2位が5回で未勝利と悔しさが募った。「普段から、自分で運を引き寄せられる人間になりたい。徳を積むというか」。両親の教えだという「周りの人に接する姿勢」に常に気を配る。日頃の「ゴミ拾い」も意識した。この日は夕方に最大瞬間風速13・9メートルを記録するなど、多くの選手が苦しむ中、吉田は比較的風が穏やかな午前スタートと運も味方した。
4打差のトップで迎える週末へ、「全部がうまくいくわけではない中、いかにスコアメイクするかがプロ。この2日間しているゴルフができれば絶対にチャンスは来る」。冷静かつ大胆に―。最終日にトロフィーを掲げ、子供たちに夢を与える。
(岩原 正幸)
◆吉田 優利(よしだ・ゆうり)
▽生まれ、サイズ 2000年4月17日、千葉・市川市生まれ。23歳。158センチ、58キロ
▽ゴルフ歴 10歳から父・英隆さんの影響で始める。16年後期からアマチュアのナショナルチーム入り。19年のプロテストに一発合格。得意クラブはドライバーで平均飛距離は約240ヤード。プレーの身上は「粘り」
▽戦績 12年に関東小学生ゴルフ優勝。千葉・麗沢高3年時の18年に日本女子アマ、日本ジュニア優勝。アマチュアの19年にワールドレディスサロンパスカップ4位、全米女子オープンに出場
▽ツアー2勝 21年楽天スーパーレディース、ゴルフ5レディスで優勝
▽オシャレ番長 昨夏の資生堂レディス前夜祭では、美容のプロからヘアメイクを施され、「化粧するのも自分磨きの一つ。テンションが上がる」と語った
▽SNSで発信 私服姿を積極的にアップするなど「美」への意識が高い
▽好物 リンゴあめ
▽好きな言葉 「聡明」。物事の先が見通せる。ゴルファーだけでなく、人としてそうありたい
▽家族 両親と弟、妹
ちょっといい話
辻村明志(はるゆき)コーチ(47)率いる「チーム辻村」恒例のオフ期間合宿は、1か月を4勤1休で行う。だが、吉田は昨シーズン前、1日も休まず30日間練習を重ねた。「タフになったなあ」と目を細めた同コーチ。今季前の合宿は1日だけ「勇気をもって休んだ」という。姉弟子で通算17勝の上田桃子(36)の背中を見て育った。「桃子がよく練習するから」と辻村氏は明かす。
昨年は2位が5回。最終日後でも、試合会場から千葉にある同コーチの拠点を訪れることが多かった。「何度か僕の前で、泣きながら球を打っていたこともある」と振り返った。
「桃子はその何倍も、何十倍も悔しい思いをしてきたんだぞ」。コーチから、時に愛情のこもった言葉をかけられ、通算3勝目へ、23歳はたくましく成長している。(岩原 正幸)