◆女子プロゴルフツアー 資生堂レディス 最終日(2日、神奈川・戸塚CC=6605ヤード、パー72)
首位と1打差の5位から出た桜井心那(ここな、19)=ニトリ=が悲願のツアー初優勝を挙げた。6バーディー、2ボギーの68で回り、通算10アンダーで並んだ桑木志帆(20)=岡山御津CC=とのプレーオフ(PO)を、2ホール目でバーディーを奪って制した。2003年度生まれの「ダイヤモンド世代」4人目の優勝者。昨季下部ツアー新記録の5勝を挙げた逸材が、得意のショットを武器にレギュラーツアーでも輝きを放ち始めた。
19歳と20歳の異例の若さのPO。ウィニングパットを沈めた桜井が、何度もガッツポーズをつくった。「心臓の音が聞こえちゃうくらい、ドキドキしていた」PO2ホール目。第1打を284ヤードかっ飛ばし、残り80ヤードの第2打で58度のウェッジを選択。ピン奥約4メートルにつけるバーディーで優勝を決めた。「勝っちゃった」とボールを拾い上げた時には、思わず笑みがこぼれた。
驚異的な追い上げでPOに持ち込んだ。16番を終えた段階で首位の桑木とは2打差。「バーディー2つしか勝つ方法はない」。得意のショットで攻めて17、18番を連続バーディーとした。今大会直前に園田謙介コーチ(38)と苦手な100ヤード以内の練習を実施。その成果を終盤に発揮した。
今季平均飛距離254・30ヤード(ツアー5位)の飛ばし屋だ。小学時代から飛距離に自信を持ち、母・伊津子さん(56)によると「全国大会優勝」「プロテスト一発合格」など「有言実行する子」だったという。未完の大器だ。プロフィルの身長は166センチだが「周りからは伸びた、と言われる。いっぱい食べて体重は3キロ増えた」と桜井は笑う。
昨季下部ツアーで5勝。レギュラーでの優勝争いは今回が初めてだった。「ギャラリーの声援、表彰式の規模が大きい」と初々しく振り返り、優勝インタビューでは涙を流した。今週は、メジャーの全米女子オープンに出場する今季4勝の山下美夢有(みゆう、21)ら有力選手が不在で、混戦をものにした。次の目標に日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯(9月7日開幕)でのメジャー優勝を掲げた。「調子を合わせていきたい」と地元・長崎で強敵を迎え撃ち、成長した姿を見せる。
海外ツアー進出を見据える。昨年8月、インドネシア開催の大会に出場。渋野日向子(24)や韓国のキム・ヒョージュ(27)ら米ツアートップ選手のプレーを間近で見た。現地のファン数百人に、サインを求められる姿が「キラキラして見えた」と刺激を受けた。早ければ来年にも米予選会に挑戦の意向。「全米女子オープンで優勝できる選手になりたい」と世界舞台でも有言実行を貫く。(富張 萌黄)
◆女子ゴルフの主な世代
▽1998年度生まれの「黄金世代」 日米通算11勝の畑岡奈紗、ともに国内8勝の勝みなみと小祝さくら、日米通算7勝の渋野日向子、国内4勝の原英莉花ら日本ツアー歴代最多12人が優勝している。
▽2000年度生まれの「ミレニアム世代」 日米通算9勝の古江彩佳、国内6勝の西村優菜、同3勝の吉田優利らがいる。
▽2001年度生まれの「21世紀世代」 国内5勝の西郷真央、21年全米女子オープン覇者&国内2勝の笹生優花、昨季の年間ポイント女王で国内10勝の山下美夢有らがいる。
◆桜井 心那(さくらい・ここな)
▽ゴルフ歴 父・一也さんの影響で6歳から始める。長崎日大高3年時に全国高校選手権(緑の甲子園)個人戦女子で、長崎県勢初優勝。21年11月のプロテストで一発合格。得意クラブはドライバー。
▽家族 父・一也さん、母・伊津子さん、兄・竣晟(しゅんせい)さん、豪さん。
▽下部ツアー賞金女王 昨季ステップ・アップ・ツアー5勝。2511万4100円で賞金女王に輝いた。
▽「心那」の名前の由来 心豊かに、穏やかに。
▽趣味 甘いものを食べる、お笑い。霜降り明星の「しもふりチューブ」を見るのが日課。
▽好きな色 ピンク、淡い色。