原英莉花、涙の復活「どん底経験して何事も前向きに」ヘルニア手術乗り越えメジャー3年ぶり3勝目


日本海の夕日を背にガッツポーズを決める原英莉花(カメラ・今西 淳)

日本海の夕日を背にガッツポーズを決める原英莉花(カメラ・今西 淳)

◆女子プロゴルフツアー 今季メジャー第3戦 日本女子オープン 最終日(1日、福井・芦原GC海C=6528ヤード、パー72)

 24歳の原英莉花(NIPPON EXPRESSホールディングス)が2020年大会に続く大会2勝目、メジャーは通算3勝を果たし、21年11月以来のツアー5勝目を挙げた。首位から出て1イーグル、3バーディー、1ボギーの68で通算15アンダーで逃げ切った。米ツアー初挑戦の夢実現へ、5月に腰のヘルニア手術を断行して復活を遂げた。17日から来季米ツアーの2次予選会(フロリダ州)に挑む。米ツアーで活躍する渋野日向子(24)=サントリー=ら1998年度生まれの「黄金世代」の遅咲きが逆襲に転じる。

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 鬼気迫る表情がようやく笑顔に変わった。最終18番。原は30センチのパーパットを沈め、右手を突き上げた。「長かったけど戦い抜いた気持ちが強い。こうして2度も優勝カップに名前を刻めて、すごくうれしい」。緊張から解放されると涙が出た。唯一4日間60台を並べ、菊地絵理香(35)=ミネベアミツミ=との2人1組の“エリカ対決”を制し、21年11月大王製紙エリエールレディス以来の通算5勝目を挙げた。

 1打差の首位から出て、1番パー5で2オンのバーディー発進。2番のボギーで「引き締まって、気持ちをつくり直した」。並んで迎えた5番、5メートルのイーグルパットを沈め、拳を握った。終盤まではマッチレース。雨が強まり、海風が舞った。15番で4メートルのバーディーを決め、勝利を引き寄せた。

 今年5月、約2年にわたり不安と隣り合わせだった腰に激痛が走った。「しびれてきて、病院での注射も効かない…」。約3か月の離脱を余儀なくされ、ヘルニア摘出の手術を決断。術後に見た親指大の塊に「こんなエイリアンみたいなものが取れました」と驚いた。

 どうしようかと迷っていた中、17日から始まる現地での米ツアー2次予選会(QT)に間に合わせるため逆算して5月に内視鏡手術を受けた。4年近くコンビを組む塚本岳キャディー(25)は「(手術を決断した理由の)一番大きな要因だった」と明かした。現在の世界ランク192位での位置からだと米挑戦は最短で2次予選から。世界ランク75位まで上がれば11月末の最終QTに挑めるが、塚本氏は「(来年は)25歳でいつまでやるか分からない中、何年も何年も(待つくらい)だったら挑戦しよう」と明かした。

 今年はボールに「readiness(覚悟)」の文字を入れた。「短い選手生命なのかな。またゴルフができるかな」と不安が募る中「できる挑戦を前向きに頑張ろう」と決意。「どん底を経験して何事も前向きに捉えられるようになった。(入院して)寝ているよりも予選落ちでも戦っている方がかっこいい」と前向きになった。8月の復帰直後には「勝ちたい気持ちがあるから戻ってこられた」と大きく成長した姿を見せた。

 黄金世代に名を連ねるが、ジュニア時代から大きな実績はなく、国内初勝利は19年で世代では7人目の遅咲き。先週から感覚が戻ったというドライバーショットを軸に「今週は思った通りに打てて、曲がる気がしなかった。ずっと自信を持ってプレーしていた」。2度目の国内最高峰タイトルと苦難に打ち勝った自信を胸に、2週後に来季米ツアー出場権を目指す新たな戦いが始まる。(岩原 正幸)

 ◆尾崎将司(まな弟子・原のメジャー3勝目を祝福)「何回も挫(くじ)けそうになっていても、こういう大きな大会で優勝するということは、やはり何かを持っているということ。ゴルフはいろいろな壁との戦いであり、今後は世界の壁に立ち向かってもらいたい! おめでとう」

 ◆原が達成した記録 

 ▽年少4位(24歳228日)でのメジャー3勝目 〈1〉畑岡奈紗(20歳245日、2019年)〈2〉諸見里しのぶ(23歳59日、2009年)〈3〉樋口久子(23歳285日、1969年)に続く

 ▽この大会の複数回優勝 21、22年大会連覇の勝みなみに続く12人目

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