◆男子プロゴルフツアー 今季メジャー第3戦 日本オープン 最終日(15日、大阪・茨木CC西C=7315ヤード、パー70)
3打差7位で出た岩崎亜久竜(あぐり、25)=フリー=が6バーディー、1ボギーのこの日最少65で回り、通算8アンダーで逆転Vを飾った。ツアー初優勝を日本オープンで飾ったのは1973年のツアー制施行後7人目。最終戦のメジャー、日本シリーズJTカップ(11月30日開幕・東京よみうりCC、報知新聞社主催)の2年連続出場を決め、「『勝ってJT』を達成できて良かった」と喜んだ。石川遼(32)=カシオ=は68、6アンダーで2打差2位だった。
スコア提出所で待機中、後ろの組の石川が18番をパーとし岩崎の初優勝が決まった。最高峰の舞台でつかんだ頂点。「人生で一番幸せ。今までのゴルフのことをいろいろ思い出してきた。夢なんじゃないかな、と思うけど本当にうれしい」。親交が深い、待ち構えていた通算20勝の谷口徹(55)と抱き合い、涙があふれた。
追い込まれた場面で狙い通りのショットが出た。終盤の17番、石川が16番でバーディーを奪い1差に迫ると大歓声が耳に入った。「相手は遼さん。プレーオフになったらアウェーみたいで不利だな」。18番は攻めることしか頭になかった。
第1打は大きく右に曲げたが、救済を受けた後のラフからの2打目を、「フェード(左に打ち出し右へと曲がる球筋)で左からの風に乗せて。条件がそろっていたので(グリーンを)狙った」と4アイアンで10メートルに2オン成功。値千金のバーディー締めで、65であがった。
プロ転向後2季目の昨年、2位が3回と未勝利ながら賞金ランク3位と大健闘した。今季はその資格で欧州ツアーに参戦。中東、アフリカ、アジアに飛んだ。だが、15試合で予選通過はわずか3回、最高60位と苦しんだ。「打ちのめされて、しんどかった」と、気持ちも落ちた。その中で「ミスした時にリカバリーが必要になる」と課題を痛感。これまでショットが中心だった練習で、日本ツアーに復帰した秋頃からアプローチ練習に半分の時間を割いた。
3週前にはコーチに「とにかく頑張るしかない」と、電話で宣言。少しずつ自信を取り戻した。この日は前半に4バーディーで首位に立ち、13番はバンカーから1メートルに寄せ、14番も2メートルのパーパットを沈め、磨いた小技の成果を早速発揮した。「これからの自分にとって(優勝は)自信になる」と、喜びをかみ締めた。
昨季は賞金ランク上位で得た日本シリーズJTカップの切符を、勝って手にした。「『勝ってJT』を達成できて良かった」。初出場の昨年は初日首位発進も12位。「コースも分かっているので、優勝目指して頑張りたい」と、メジャー連勝を見据えた。名前の「あぐり」は、両親から「海外で通用するように」と命名された。欧州ツアーで一度は挫折を味わったが、将来は再び欧州、そして米国へ。日本ツアーの5年シードと24年全英オープン出場権を獲得した25歳は、「日本一」の称号を手に世界へと飛躍する。(岩原 正幸)
◆岩崎 亜久竜(いわさき・あぐり)
▼生まれ、サイズ 1997年12月17日、静岡・清水町生まれ。25歳。181センチ、86キロ。血液型A。家族は両親と姉
▼ゴルフ歴 8歳で始め、中3で関東ジュニア2位。通信制のクラーク国際高から日大に進み、2019年の日本アマ4位。黒宮幹仁コーチに指導を受ける
▼アルバイトも 高校時代はドーナツショップでバイト経験も。「遠征費とか、お金がかかるので」
▼プロ入り後 20年9月にプロ転向し、昨年は未勝利も日本ツアー賞金ランク3位と躍進。今季は主に欧州ツアーに出場した。日本ツアーは今季10戦目
▼大のコーヒー好き 「コメダ珈琲店」が憩いの場所だという。究極の夢プランは「のんびりコーヒーショップを開くこと」
◆岩崎が達成した記録
▽ツアー初優勝がメジャー 1973年のツアー制施行後29人目。日本オープンでは7人目。
▽大会2度目出場でV 記録の残る85年以降で伊澤利光以来2人目(海外選手除く)。伊澤が51試合目のため、33試合目は最短。
◆亜久竜に聞く
―3打差でスタート。
「混戦だったので、いつも通り自分のできることをやるしかない。(後半)苦しい状況もあったが、あまり自分にプレッシャーをかけずにうまくできたと思う」
―18番2打目を刻む選択肢は?
「確実にバーディーを取って、プレーオフをせずに優勝したかったので。石川さんが追い上げてきていたので、そうした」
―ビッグタイトルを獲得した。
「去年なかなか勝つことができず、今年も初めから欧州で本当に苦しんでいたので、去年のような状況(好調時)に戻れるか不安もあった」
―谷口プロからの助言。
「昨年(11月)のカシオワールドオープンの週に『予選ラウンドはお散歩してこい』(気楽にやるように、の意味で)と気持ちの持ち方を教えてもらった」