◆男子プロゴルフツアー カシオワールドオープン 最終日(26日、高知・Kochi黒潮CC=7335ヤード、パー72)
中島啓太(23)=フリー=が1イーグル、4バーディー、2ボギーの68をマークし、通算12アンダーで4位に入って初の賞金王に決まった。今季獲得賞金は1億7248万円強とし、次戦の最終戦、日本シリーズJTカップ(11月30日~12月3日・東京よみうりCC=報知新聞社主催)で逆転される可能性がなくなった。石川遼の18歳、松山英樹の21歳に次ぐ、23歳155日でツアー史上3番目の若さで戴冠(たいかん)したキングが、スポーツ報知に独占手記を寄せた。
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賞金王になることができました。アマチュア時代から背中を追ってきた金谷拓実さんがいなかったら、ここまで粘れていないと思うし、相手が10代のアマチュア時代から親交が深く、切磋琢磨(せっさたくま)してきた金谷さんじゃなかったら賞金王になれていたかも分かりません。賞金王を目指してここまで戦ってきたというより、金谷さんとの賞金王争いがとにかく幸せだった。今はそんな気持ちです。最後に1試合、日本シリーズJTカップが残っているので、そこで一緒に優勝争いがしたいです。
1年間は本当に長かったです。プレーオフの末に2位だった5月のミズノオープンが転機でした。あの試合から5週連続最終日最終組が始まり、なにかつかめた感じがして。遊び心を持ってボールをコントロールできるようになって、ショットに常に自信を持てるようになりました。試合を目の前の一打ではなく、72ホールとして考えるようにしたところ、楽に試合を組み立てられるようになりました。
夏前ぐらいから、不眠にも苦しみました。薬をのまないと眠れなくなってしまって。夢に自分が打ったミスショットが出てくるんですよ。ウワッて、起きるじゃないですか。反射的に両手をグリップを握るように組んじゃう。もう病気、です(笑い)。それくらいミスショットの残像が離れなくて、考え込んでしまいました。多分練習不足だったんです。
夏場は体がバテ気味で、頭の中もパンパンで疲れ切っていて。試合中は練習せずに帰ったりしていました。だから自信も持てていませんでした。悪いショットを打ったまま帰っているから、夢に出てくる。11月のマイナビABC選手権あたりから練習量が戻り、今季3勝目を挙げられました。やはり練習は大事です。
ポーカーフェースと言われますが、実はめちゃくちゃ試合中に喜怒哀楽しています。ただ、顔に出していないだけ。2010、15年賞金王の金庚泰(キム・キョンテ、37)さんの影響です。「鬼」と呼ばれるほどの強い勝ち方に憧れていたので。「無」というか、感情を出さないところが本当に好き。感情を表に出さない方が、相手にしたらいやだから。
かねてからファンだった巨人の菅野智之投手からも、多くのことを学んでいます。先発投手とゴルファーって、試合の進め方が似ていると僕は思っていて。9回まで投げるとしたら、絶対にアップダウンがあるから。菅野さんに関するYouTube動画を見たときに「集中力を100%に上げるためには常に100%じゃだめ。70%でやっておきながら、ギアを上げた時に120%まで持っていく」とあったんです。ゴルフは4日間72ホールだから、すごく似ているなと。
昨年11月に共通の知人を介して知り合った菅野さんに夏、一度聞いたことがあるんです。「イライラするときどうするんですか?」って。そしたら「イライラしない」って言ったんですよ。「なんでですか?」って聞いたら、「イライラできるほど偉くないし、強くなれていない」って返ってきたんです。あの人のレベルでさえ、そう言うんですよ。僕なんてとうてい達していないから、怒れるわけがないんです。
全英オープンを勝つことが一番の目標です。全英って、18番グリーンのスタンドがすごく大きいんです。世界一ゴルフファンが集まる大会で、あのグリーン上で勝ちたい。21年大会のコリン・モリカワ(米国)さんの優勝スピーチがすごく良くて。「世界一の大会で、世界一のゴルフファンが見ているなかで勝てて、本当にうれしい」って言ったんですよ。格好良かった。だからそこで勝つのが一番の夢です。
応援されながらゴルフをしないと、アスリートとして楽しくないですし、応援される存在でありたいです。応援されるためには強くないといけないし、人柄も良くないといけない。客観的に自分を見ながら成長していって、世界で勝てる選手になれるように頑張っていきます。来週が今季最終戦です。支えてくれた家族、チームスタッフ、応援してくれたファンの皆さまへの感謝を込めて、優勝して1年を終えたいです。(プロゴルファー・中島 啓太)