パリ五輪の男子ゴルフは1日(日本時間同日午後4時)から開幕して4日間、行われる。3月の欧州男子ツアーで日本勢5人目の優勝を果たし、初出場の中島啓太(24)=フリー=へ向けて、小学時代から指導してきた恩師の吉岡徹治氏(61)=宮崎・美々津CCゴルフアカデミー校長=が、エールを送った。自身の経験からジュニア育成への意識も高い昨季日本ツアーの賞金王。応援してくれる子供たちへ、花の都から吉報を届ける。
吉岡氏が主宰するジュニアゴルフキャンプに、毎週のように参加していたのが当時小学3年の中島だった。そんな出会いから約15年がたち、まな弟子が五輪に初めて出場する。6月の全米女子オープンを制し、パリ五輪女子日本代表入りした笹生優花(23)=アース製薬=も代々木高ゴルフ部監督時代の同氏の教え子でもある。「教え子2人が五輪日本代表なんて奇跡的。その運を生かして、スポーツの祭典なので結果を気にせず楽しくやってほしい。大変だと思うが、無理せずけがなくやってほしいですね」とエールを送った。
今年3月、シンガポールで中島と1週間、一緒に過ごした。プロ転向後初めて弾道測定器を使ってスイングデータを記録。持ち球の左から右へと曲がり落ちるフェードにストレート、右から左へのドロー。いずれも3、4年前のアマチュア時代と比べ「プロらしい、いい数値になっている」と球筋に大きな成長を感じたという。その2週間後、インドで開かれた欧州男子ツアーで中島は海外初優勝。「ゴルフ人生をかけてきている子だから」と吉岡氏は感慨深く活躍を喜んだ。
師弟2人は日本のジュニア育成へ向け、話し合いを重ねている。毎年3月に美々津CCで開催するジュニア大会は来年から「中島啓太カップ」と名称変更予定。中島監修の下、ジュニア育成事業も進行中だ。「中島も遊びの中でゴルフを楽しみながら覚えた」と、ジュニア時代は吉岡氏の教え子でもある石川遼(32)らにゴルフを教わった経験から、既に後継者育成への思いも強いという。
中島は今月、自身のインスタグラムに小学生から届いたパリ五輪への応援メッセージの写真を投稿。「『スポーツの意義・価値』を大切にプレーします」とつづった。世界中が注目する4年に一度のスポーツの祭典。恩師の思いも胸に、雄姿を多くのジュニアへ届ける。(富張 萌黄)
◆中島 啓太(なかじま・けいた)2000年6月24日、埼玉・加須(かぞ)市生まれ。24歳。日体大卒。6歳でゴルフを始め、東京・代々木高3年時の18年にオーストラリアアマチュア選手権で日本人初V。18年アジア大会個人&団体金。21年アジア太平洋アマ選手権を制し、22年マスターズ出場。21年9月のパナソニックオープンで日本ツアー5人目のアマ優勝。22年9月にプロ転向し、23年日本ツアー賞金王。今年3月、欧州ツアーヒーロー・インディアンオープンで初優勝。国内通算4勝。177センチ、75キロ。
◆五輪のゴルフ競技 1900年パリ、04年セントルイス大会で開催。以降は除外され、2016年リオ五輪で112年ぶりに正式種目に復帰。今夏のパリ五輪は男女各60選手が出場し、72ホールのストロークプレーで個人戦のみ開催。メダル圏内3位以内で複数選手が並んだ場合、決着がつくまでプレーオフ(PO)が行われる。リオ大会で初出場の日本男子は池田勇太が21位、片山晋呉は54位。ローズ(英国)が金メダル。21年東京五輪は松山が銅メダルPOの末4位、星野陸也が38位で当時、世界ランク5位のシャウフェレ(米国)が金メダルに輝いた。
◆ル・ゴルフナショナル パリ南西のベルサイユ宮殿に近接する広大で平らな更地で、最高級のトーナメントを開催することを目的に設計され、1990年にオープン。2016年に全面改修され、18年には欧州ツアーと米ツアーの対抗戦「ライダー・カップ」が開催された。欧州男子ツアー「フランス・オープン」の会場でもあり、23年大会は久常涼が優勝。起伏のあるフェアウェーに傾斜のきついグリーン、無数のバンカーと池や小川も備えた多様なショットが要求される難コース。男子は7174ヤード、パー71の設定。