男子プロゴルフツアーのメジャー最終戦、日本シリーズJTカップは28日から4日間、東京よみうりCC(7002ヤード、パー70)で行われる。2015、19年大会覇者の石川遼(33)=カシオ=は27日、プロアマ戦で18ホールをラウンド。いよいよ幕を開ける、ツアー史上最多6人による最終戦での賞金王争い。優勝が絶対条件の逆転キング取りへ「邪念」を払い一打集中を貫く。
いつになくにぎやかな賞金王候補によるフォトセッションで、石川は端に納まり笑みを浮かべた。最終戦まで6人が賞金王の可能性を残すのは1999年の日本ゴルフツアー機構(JGTO)発足後では最多。「すごく珍しいことだし、いいこと。高いクオリティーで年間を通してプレーしている選手がそれだけ多いということ。めちゃ楽しみ」。発する言葉に自然と熱がこもった。
過去2勝と好相性の最終戦で優勝し、トップの平田憲聖が単独2位より下の順位に終わると2009年以来の賞金王獲得となる。「僕に関しては自力ではない。だからこそ、変な邪念や雑念が入ることはなくできる。シンプルに物事を考えることが、ゴルフはすごく重要」。ランク6位からの逆転の可能性を残す一戦を前に、冷静そのものだ。
最年少の18歳で賞金王に輝いた、15年前の苦い思い出が今も胸にある。ランク1位で迎えた最終戦の初日、8オーバー最下位と出遅れた。「かなり意気込んで、決めてやる!と思って、大たたきをした。当時自分はかなりイケイケでやっていたけど、そういう前のめりな気持ちをプラスに働かせることはすごく難しい」。33歳になった今、気の持ちようも変わった。
燃えるような熱いハートは健在だ。この日のプロアマ戦を、半袖でプレー。17番パー5はピン右8メートルに2オンし、名物ホールの18番パー3では3番ユーティリティーでピン右4メートルを捉えた。「調子はいいと思う。波なくやれている」。前日に続き、オデッセイのAiトライビーム2ボールにスチールとカーボンの複合シャフトを刺した新パターをテスト。最善を求め、ティーオフ直前まで調整を続ける。
前週のカシオワールドオープンは4位に終わり、悔し涙を流した。「最終日の反省を今週につなげたい。ガンガンいこうとか、出たとこ勝負みたいな、祈る感じではなく。準備したことをコントロールしてやり続けたい」。記録の残る85年以降、最終戦による優勝で逆転賞金王になったのは00年片山晋呉、17年宮里優作の2人だけ(ともに2位から)。一打集中の先に、6位からの大逆転劇が幕を開ける。(高木 恵)
◆賞金王決定の条件 最終戦で可能性が残されたのは首位の平田から6位の石川まで。今平、岩田、木下、石川は優勝が絶対条件。日本シリーズの優勝賞金は4000万円、2位は1500万円のため、平田と2500万円差以内の木下までは、優勝すれば無条件で戴冠が決まる。石川は平田が単独2位の場合には逆転不可。仮に平田が30位に終わった場合、金谷が逆転するには2人までの8位タイ以上の成績が必須。
◆賞金王になると? 〈1〉翌年からの日本ツアー5年シード〈2〉翌年の欧州ツアー出場権(賞金ランク3位まで)が得られる。23年度実績ではメジャー、全英オープン出場権がある。
◆2009年大会 戴冠の可能性を残したのは賞金ランク首位の石川遼と2位池田勇太の2人。ともに初日は78で26位と、まさかの最下位スタートに。その後も両者巻き返せず、石川は通算3オーバーの19位、池田は7オーバーの23位に終わった。石川は世界主要ツアー最年少18歳2か月19日で賞金王に輝いた。