◆米男子プロゴルフツアー マスターズ 第1日(10日、ジョージア州オーガスタ・ナショナルGC=7555ヤード、パー72)
【オーガスタ(米ジョージア州)10日=高木恵】2021年覇者の松山英樹(33)=LEXUS=が、風の影響を受けやすい名物の「アーメンコーナー」でオーガスタの悪夢に見舞われた。13番パー5で会心の一打がピンにはねてクリーク(小川)に落ち、痛恨の5オン2パット。2バーディー、1ボギー、1ダブルボギーの1オーバー73で、首位と8打差の38位と出遅れた。16年リオ五輪金メダリストで13年全米オープン覇者のジャスティン・ローズ(44)=英国=が65をマークし、自身5度目の首位発進を決めた。
大観衆の悲鳴とともに小川に向かって転がり落ちる球を、松山はぼう然と見送るしかなかった。13番パー5。残り80ヤードの第3打はカップ際に着弾する完璧な一打だったが、ワンバウンドしてピンに跳ね返り、グリーン手前のクリークへ消えた。「いいショット、いいアプローチができていたので、『あっちゃー』という感じだった」。バーディーチャンスが一転、5オン2パットのダブルボギー。オーガスタの女神に突き放された。
不運続きのアーメンコーナーだった。昨年9月にハリケーンが直撃し、地元紙によると1000本を超える松の木が倒れた。11~13番で、今年はさらに風の影響が色濃くなった。12番パー3は、第1打を打った直後に向かい風が吹いた。グリーン手前のバンカーに入れ、ピン奥1・2メートルがカップ右に蹴られて初ボギー。アーメンコーナー3ホールでスコアを3つ落とすのは、通算51R目で自己ワーストだ。「(13番の)いいショットでああいう結果になってしまった時は切り替えるのは難しい。まだ初日で取り返すホールもあると思いやっていたが、最後までバーディーを取ることができなくて残念」と肩を落とした。
練習場で好ショットを放ち、落ち着いたたたずまいで1番のティーグラウンドに上がった。15ホールでグリーンを捉え、パーオン率83・33%は全体2位。「良かった」と振り返った7、8番の連続バーディーで2アンダーまで伸ばした。コース内の手動のリーダーボードに初めて「MATSUYAMA」の文字を埋め込み反撃態勢に入るも、後半にその流れは断たれた。「いい一日ではなかった」。率直な思いが口をついた。
仮に13番がバーディーなら2アンダーで7位発進だっただけに、ダメージは大きい。最終組の2つ前のスタートだったこの日、ホールアウトは午後7時を回った。不規則な風が上空を舞った5時間40分の長丁場を終えると「もう少しバーディーを取っていけるように頑張りたい」と懸命に前を向いた。18ホール終了時のスコアでの最大逆転優勝は90年のニック・ファルド(英国)、05年のタイガー・ウッズ(米国)の7打差。厳しい船出から巻き返しを図る。
【ローズ】 〇…元世界ランク1位の44歳が史上最年長の初Vへ単独首位発進した。2度の3連続を含む8バーディーを奪い、大会自己最少の65をマーク。「素晴らしいスタートを切れてうれしい」とかみしめた。15年は4打差、17年はプレーオフの末に2位と優勝を逃してきた。初制覇すれば、98年のマーク・オメーラ(41歳89日)を抜く最年長。「44歳だから、ゴルフは今後5年、10年と楽になることはない。チャンスは減っていくから、最大限に活用しないといけない」と言い切った。
【シェフラー】 〇…史上4人目の連覇に向けて、首位と3打差の2位と好スタートを切った。4番で18メートル、16番で約12メートルのロングパットをねじ込むなど4バーディー。アーメンコーナーの3ホールは全てパーと崩れず、ボギーなしの68に「かなり良い感触だった」と手応えを語った。昨年末の右手負傷を感じさせず、優勝した昨年と同じ2位発進。「良いスタートを切れば統計的に優勝の可能性は高くなる」と冷静にとらえ、タイガー・ウッズ以来の連覇を見据えた。
◆主なアーメンコーナーの悲劇
▽中嶋常幸 1978年大会第2日に13番パー5で小川に捕まり、11オン2パットで大会史上1ホール最多に並ぶ「13」の大たたき。
▽トム・ワイスコフ(米国) 80年大会第1日に12番パー3で5回も川に入れて「13」を記録。
▽ジョーダン・スピース(米国) 16年大会最終日12番パー3で単独首位で4人目の連覇へ迫っていたが、2度小川に入れる「7」で大逆転負けの2位で終えた。
▽タイガー・ウッズ(米国) 20年大会最終日12番パー3で小川に3度入れて9オン、1パットでプロ自己ワーストの「10」。
◆アーメンコーナー 「神に祈るほど難しい」ということから名付けられた、オーガスタ・ナショナルGCの11~13番を指す。520ヤードと、パー4では最も長い11番は左に池があり、12番は155ヤードの短いパー3ながら、非常に風が読みにくい小川越え。13番パー5は左ドッグレッグで、左サイドからグリーン手前にかけて小川が流れている。松山は昨年までは、11~13番で1つスコアを落としたのが自己ワースト記録(11年最終Rなど計11R)だった。15年最終Rには11番バーディー、13番イーグルで3つスコアを伸ばしたこともある。