天国と地獄を味わった努力家、西郷真央の担当記者が復活を見ていた「不屈の精神力」


◆米女子プロゴルフツアー 今季メジャー第1戦 シェブロン選手権 最終日(27日、米テキサス州・カールトンウッズ・クラブ=6911ヤード、パー72)

 西郷真央(23)が日本女子5人目のメジャー覇者となった。2022年は国内で5月までに5勝を挙げる快進撃も、同年の最終戦は4日間35オーバーという屈辱的スコアで最下位も経験。それでも棄権せずに大会を完走した。23年11月には国内6勝目と見事に復活し、米本格参戦2年目にツアー初Vを海外メジャーで成し遂げた。かつて天国と地獄を味わった努力家の決して逃げない姿勢を、前ゴルフ担当キャップの岩原正幸記者が「見ていた」。

 正規の18番での3メートルのバーディーパットの場面。西郷の気持ちの強さが凝縮されていた。「これを決めないと、またこういう機会になった時に勝てないと思った」。5人のプレーオフに持ち込み、歓喜の瞬間を自らの手でたぐり寄せた。不断の努力が、最高峰の舞台で実を結んだ。

 国内でツアー本格参戦3年目だった22年。開幕から5月までに出場10戦5勝と、通算50勝の不動裕理(11戦5勝)を超える新記録で勝利を重ねた。だが、首痛などの影響で終盤戦にかけてスイングを崩した。同年11月のJLPGAツアー選手権リコー杯。ティーショットが乱れ、初日から83、83、76、81で35オーバー40位に終わり、優勝した同期の山下美夢有(みゆう)に50打差をつけられた。それでも逃げなかった。棄権せず、ティーグラウンドに立ち続けた。

 周囲から(心理的影響で本来の動きができなくなる)“イップス説”もささやかれたが、それをはね返すだけの不屈の精神力が西郷にはあった。かつて「調子が悪い時は、お風呂につかって(スイング)動画を見る。携帯をなくしたら大変」と話したほどの根っからの研究熱心さが魅力。自身が課題を書きためたメモや動画を見直し、時にふがいなさから練習中に涙を流したこともある。だが、暗闇から決して立ち去ることなく、自分を見つめ直し、グリップがすり減るほどの練習量で23年11月の国内復活Vにつなげた。

 23年3月のダイキンオーキッドレディスでは米ツアーを優先し、前年覇者の出場義務違反で日本女子プロ協会から100万円の罰金を科される“騒動”もあった。それは、事前に主催者に相談し、海外挑戦への理解を得た上での「苦渋の決断」だった。翌24年は同大会に、過密日程にもかかわらず出場を即決し、2位で大会を盛り上げた。義理堅い一面もある。

 この日、「5人のプレーオフは最後まで逃げることなく戦い抜こうと、強い気持ちを持ってプレーした」と振り返った。かつて経験した天国と地獄。たくましさを増したゴルファーが一つの夢をかなえた。(2017~24年ゴルフ担当・岩原 正幸)

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