
18番でバーディーパットを打つ木戸愛(カメラ・堺 恒志)
◆女子プロゴルフツアー 資生堂・JALレディス 第3日(5日、神奈川・戸塚CC=6766ヤード、パー72)
第3ラウンドが行われ、6位で出たプロ18年目の木戸愛(めぐみ)=日本ケアサプライ=が6バーディー、1ボギーでこの日ベストの67をマークし、通算7アンダーで永峰咲希(ニトリ)と並んで首位に浮上した。
「今週替えたパターが活躍してくれた」。2番で11メートルのロングパットを沈め、4番で5メートルの下りフック、5番は9メートルのスライスラインをねじ込んだ。男子プロの石川遼(カシオ)の専属キャディーを務める佐藤賢和(よしかず)さんとのタッグでパッティングのラインを読み切り、バーディーを量産した。
優勝すれば、2012年7月のサマンサタバサレディース以来、12年349日ぶりの2勝目。22年樋口久子・三菱電機レディスで金田久美子(スタンレー電気)マークした11年189日を更新し、ツアー最長ブランク優勝記録となる。酷暑のラウンドを終えた木戸は「そこに向かってずっとやってきている。あと18ホール、しっかり頑張りたい」と汗をぬぐった。
優勝を届けたい存在が2人いる。まずは、国内男子ツアー最多94勝を誇る尾崎将司だ。
23戦中14戦で予選落ちした23年シーズンを終えたオフ。30歳を超えて結果が出ない状況に「何とかしたい。何かまだできることがあるという思いだった」と、尾崎将の長男・智春氏を介してジャンボに弟子入りした。千葉市内にあるジャンボ邸に月曜日を中心に足を運び、復活を目指して懸命に球を打ち込んだ。
同年の平均飛距離は231・31ヤードと、全盛期より10ヤードほど減。ジャンボの教えは「思い切り振れ。とにかく振れ!」だった。タイヤ引きで足腰を鍛え、先端に羽根がついたジャンボ特製の素振り棒は「超・友達です」と毎日振り続けた。今季の平均飛距離は241・43ヤードに伸び、パーオン率71・256%は全体9位と好スコアにつながっている。現在も定期的に通い「やり続けてることがいい方向に向かってる。ジャンボさんにいい報告がしたい」とかみしめた。
もう1人は、23年12月に死去した父・修さん(享年73)。「キドクラッチ」などの技でプロレスラーとして活躍し、生前はツアーに同行して応援してくれた。「一生懸命前向きに頑張っていれば、いい日が来る」。そう言い続けてくれた言葉は胸に刻んでいる。
父との2ショット写真をヤーデージブックカバーにはさみ、常に持ち歩きながらプレーしている。木戸は「父の言葉がすごい自分の背中を押してくれている。いい報告ができるように、明日は思い切りチャレンジしたい」と涙ぐんだ。
ジャンボと修さん。ゴルフとプロレスで競技は違うが「(練習法は)手作り感がある。父もそういう人だったので、重なるところがあると勝手に感じてます」と木戸は言う。自身を支えてくれた師匠、そして天国の父に2勝目を届ける。(星野 浩司)
◆木戸 愛(きど・めぐみ)1989年12月26日、神奈川・横須賀市生まれ。35歳。10歳でゴルフを始め、宮城・東北高卒業後の2008年にプロテスト合格。11年に賞金ランク49位で初シードを獲得。12年7月のサマンサタバサレディースで初勝利。23年8月8日、男子プロの神農洋平と結婚。父は同12月に死去した元プロレスラーの修さん。23年オフから尾崎将司に弟子入り。172センチ、56キロ。