
初優勝を果たした小斉平は妻・美月さん、長女・和暖ちゃんと並んでトロフィーを抱える(カメラ・星野 浩司)
◆男子プロゴルフツアー Sansan・KBCオーガスタ 最終日(31日、福岡・芥屋GC=7293ヤード、パー72)
プロ10年目の小斉平(こさいひら)優和(27)=フリー=が悲願の初優勝を飾った。1打差4位で出て6バーディー、1ボギーの67をマークし、通算18アンダーで逆転。昨年大会のプレーオフでティーショットを3連続OBとして敗れた雪辱を果たした。20年に米下部ツアー挑戦も振るわず、20―21年には国内シード権を獲得したがわずか1年で手放すなど苦難を乗り越えた。優勝賞金は2000万円で、生涯獲得賞金は1億円を突破。来季米ツアーへの再挑戦を目標に掲げた。
「優勝決まったよ」。最終組の1組前でホールアウトしていた小斉平は、18番グリーン脇で平田憲聖から伝え聞いた。ツアー仲間から水をぶっかけられて祝福され、1歳8か月の長女・和暖(よりは)ちゃんを抱き上げ、妻・美月さん(27)とハグ。プロ10年目、129戦目の初Vに「泣きそうになったけど、泣かなくてビックリ。家族のおかげで優勝できた」と満面の笑みを浮かべた。
雷雨接近で1時間半の中断による再開後、13番から3連続バーディーなどで首位に浮上。最終18番パー5で1年前の悪夢を払しょくした。香妻陣一朗とのプレーオフ2ホール目でティーショットを3連続で右に曲げてOB。球筋は当時のドロー(右から左へ落ちる)から逆のフェードに変え、パーで優勝を決定づけた。4日間でボギー4つと安定感抜群。「98点…いや、100点。悔しい思いをして、今年は絶対優勝するぞとここに来た。うれしい」とかみしめた。
ここまで苦難の連続だった。高校時代に日本一に輝いた逸材は、18歳でプロ転向も泣かず飛ばず。20年、米下部ツアーに出場したが19戦で予選落ちは13度と苦戦。21年にシード獲得も1年で手放した。どん底だった。「自分の力じゃ、どうにもならないほど落ち込んだ」。ゴルフが嫌いになる時期もあった。
ショット技術の改善に加え、マイナス思考になりがちなメンタル面をトレーナーの指導を受けて意識改革した。今大会開幕前日の27日には、書店で偶然見つけたメンタル本を買って熟読。「変にネガティブでなく、ポジティブにと書かれていた。自分は大丈夫だと心で念じて、平常心でプレーできた。題名は忘れたけど…」とニヤけた。
今季ツアー6人目の初優勝。ツアー7勝の金谷拓実、2勝の生源寺龍憲ら同じ98年度生まれのライバルに続き、生涯獲得賞金はようやく1億円を超えた。今秋は来季米ツアーの出場権をかけた1次予選会に臨む予定だが「優勝したので2次予選から(の受験)が見えてきた」。夢舞台への再挑戦を見据えた。(星野 浩司)
◆小斉平 優和(こさいひら・ゆうわ)1998年5月22日、大阪・高槻市生まれ。27歳。3歳の時に父の影響で競技を始め、2011年つるやオープンでツアー初出場。茨城・日本ウェルネス高3年時の16年に日本ジュニアと関西アマ優勝。同年12月にプロ転向、17年にデビュー。180センチ、85キロ。家族は妻と1女。