◆男子プロゴルフツアー ANAオープン第3日(17日、北海道・札幌GC輪厚C、7063ヤード、パー72)
25歳の初ラウンドは、ほろ苦いものとなった。誕生日を迎えたホストプロの石川遼(カシオ)はショットもパットも乱れて72。通算12アンダーのままで4打差4位に後退した。それでも終盤にパターの握り方を逆手から順手に変えた上、逆手に戻すという奇策でパットが復調。逆転で大会連覇を狙う。通算16アンダーでブレンダン・ジョーンズ(41)=豪州=が首位。
こだわりも捨て、柔軟に対応した。14番だ。石川は約5メートルのバーディートライの直前、パターの握りを逆手から順手(左手が上の状態)に変えた。「順手ならいいストロークができると思った」。惜しくも外れたが握りは変えない。15番は7メートルを決めバーディーを奪った。
ラウンド途中にパターの握り方を変えるプロは少数派だ。ところが、この日の石川は1度変えただけで終わらなかった。17番は逆手で2メートルを沈めバーディーだ。「良くなったからクロス(逆手)に戻しました」。当然のような口ぶりで振り返った。
決断の決め手になったのは13番だ。3パットでボギーを喫し「リズムが悪い」。感覚を取り戻そうと、アマ時代から慣れ親しんだ順手に変えた。実は63で回った初日も「2回だけ順手で打った」。手探りではなく手応えを得た上での握り変更だった。
2つの握りを併用する理由は、現実と理想が違うからだ。7月の復帰後は逆手がほとんどで、今季初優勝した8月のRIZAP・KBCオーガスタも逆手。しかし本音は「順手が良くなれば順手にしたい」。今はいわば“過渡期”の段階。試行錯誤を繰り返し、決めたことに意味がある。
25歳の誕生日。3月に結婚した新妻がロープ外から見守る中、ダブルボギーも叩き「どん底ですね」と苦笑いした。ストレスがたまるバースデーになっても、前を向く。「まだまだ分からない」。大会中はサケや野菜など北海道の名産品を平らげ力に変えてきた。“道産子パワー”も借りて、V2に挑む。(高橋 宏磁)