【日本S】遼、見えた逆転連覇! 松山から受けた「スペシャルレッスン」でアイアン復調


18番、競技を終えて歓声に応える石川遼

18番、競技を終えて歓声に応える石川遼

 ◆報知新聞社主催 男子プロゴルフツアーメジャー最終戦 日本シリーズJTカップ第3日(3日、東京・東京よみうりCC、7023ヤード=パー70)

 昨年大会覇者の石川遼(25)=カシオ=が4バーディー、ボギーなしのベストスコア66で回り、通算6アンダーで首位と5打差の5位に浮上。前週のW杯(豪州)で松山英樹(24)=LEXUS=から「スペシャルレッスン」を受け、アイアンショットが復調した。25歳78日での連覇を逆転で達成すれば、1973年のツアー制施行後では大会史上最年少。メジャー全体でも日本人最年少となる。

 苦しんだ先に光が見えた。17番の第1打。石川は309ヤードのビッグドライブでフェアウェーを捉えると、第2打を7アイアンでピン右手前3メートルに突き刺した。首位へと忍び寄る千両役者に、待ちわびたギャラリーから大歓声が起こった。2パットで楽々とバーディーを奪い、表情を緩めることなく右手を振った。ベストスコアを叩き出し、この日唯一のボギーなしで5位浮上。「一つでも落としたら試合が終わる。優勝するための最低ライン」。史上6人目(7例目)の連覇へ、心の中は張りつめていた。

 改良中のアイアンショットが復調した。元々、ドライバーは水平気味に振り、アイアンは上からV字のように下ろして球を打つタイプ。だが2つのクラブで形が異なると、不調時に一方の形に引っ張られてスイングが安定しなくなる。そのため両方とも水平気味に振るよう練習を続けてきた。

 前週のW杯。もがき苦しむ中で自分の選択が正しいのか尋ねた。「俺もそう思う」。松山は2つのスイングが同じ形。世界ランク6位で同学年の戦友がくれた一言で不安が消えた。「英樹のスペシャルレッスンを受けた。すごいヒントをもらって、自分でも『やっぱりそうなんだ』と確信できた」。好ショットを打てば「今のいいっしょ!」と一声くれる。背中を押された。「15、17、18番のアイアン(ショット)は距離感も合っていた。プラス材料。あしたが楽しみ」。その表情に感謝の思いをにじませた。

 W杯で2人は連日、他国の選手がいない時間にも球を打ち続けた。コース関係者が「整備ができない」と苦笑いするほど長い、世界一の練習量。石川の隣にいたのは、15歳で初優勝を飾った自分を追い越し、世界の第一線に立つ松山。悔しさを持ちつつ、素直な心で受け止めた。「最高に楽しかった。本当に終わりたくなかった」。練習場、ラウンド中、夕食時間…。ともに過ごした貴重な10日間は、財産として胸の中心にある。

 逆転で連覇を決めれば大会史上最年少、日本人のメジャー全体でも中嶋常幸の29歳を大幅に更新する。15歳だったアマ時代の初Vも、10年の中日クラウンズで世界最少スコアの58も出したのも、最終日の大逆転だった。「やるべきことができればチャンスはある。次、英樹に会った時に『良くなってるね』と言われるように頑張らなきゃいけない」。何度も奇跡を生んだ石川遼が、一振りに魂を込める。(浜田 洋平)

 ◆石川の最終日5打差以上の逆転V 10年中日クラウンズで6打差の18位から、世界最少スコアの58をマークして優勝。通算15勝のうち4回逆転Vを達成している。