驚異のエージシューター田中菊雄の世界24 武藤一彦の─広めのフックスタンス、ちょっぴり左手甲上のフックグリップ、腕を伸ばして打ってみよう【技術編】


 マイゴルフ、マイスイングをしっかり仕立ていつまでもナイスゴルフ、80を過ぎて人生で最高のスコア、エージシュートを目指す名人、田中さんのスタンスは超フック。左手甲は何であんなに上を向いているか。

 

田中さんのウエッジショット。こんなにしっかり土台をつくる

田中さんのウエッジショット。こんなにしっかり土台をつくる

 ドライバーからフェアウエーウッド、ユーティリティ、アイアンからバンカーを含めたアプローチ、そしてパット。名人の共通した技術で最も目を引くのはスタンスとグリップであろう。

 

 まずスタンスだ。広い。松山英樹の力感あふれるスタンスの広さは2017年シーズン、さらにワイドになったが、田中さんの右45度のワイドスタンスはその力感において、英樹を上回る迫力。このフックで広い独特の田中タンスはドライバーからパットまで一貫する姿勢。そう、土台である。

 

 田中さんのスタンスもはじめはスクエア。それが右足を引き、引くほどに広くなったのは70歳過ぎてからだ。「手を伸ばしてたたく。たたくために手を伸ばす。左を伸ばし、球を遠くに置き、右を伸ばしてインパクト。そのためバックスイングを大きくするためにフックスタンスになっていった」

 

 いま、その広さはドライバーを最大に次にパット、そしてバンカー、ショートアプローチでスタンスは最も狭くフックの度合いは小さい。距離やライなど状況で思いのままに変わるということだが、フックでワイドは一貫している。

 

 ドライバーショットの飛距離を伸ばしたい。アイアンの正確性と高低の打ち分け、アプローチのコントロール、すべては違う技術と思われがちだが、スイングの大小はあってもクラブと球の芯と芯のぶつかり合いがスイングの命である。インパクトの目指すところは変わらない。

 

 ウエッジを手にやってみよう。右足をいつもよりちょっと引いた広めのスタンス。左グリップの甲を少し上に向けたフックグリップ。左足かかと内側の球に─これが大事だ─球を遠くに左を伸ばし右も伸ばすアドレス。バックスイングは肩をしっかり回し、右手首のコックを使ってしっかり上げたらしっかり打つ。うまく打つと球は左へひっかかるならしっかりインパクトしている証拠で合格、だが、当たらなかったら手が伸びていない。インパクトできないということは左の壁ができていないのだ。球を遠くに置きバックスイングを大きくとるとスイングはゆったりとインパクトする。大きく上がったものはゆっくり打てるが、バックスイングが小さいとフォローで打つからインパクトができないものなのだ。

 

 「インパクトとは伸びた両手が球をとらえた瞬間、左頬に壁ができ壁があるとインパクトで右手が左手を追い越して球に最大のパワーが伝わる。ショートアイアンですら左へ行かないショットではドライバーで球を打つのは無理です。そのくらいの覚悟でスイングとは覚えていかなくてはならない」と田中さんは言う。「左に飛んだら、そこから球の位置を遠くしたり、中に入れたり打ちながら持ち球を作っていくのです。それがゴルフ。だいご味です」。一番、やってはいけないのは当たらないからといって球を近くに置くことそれだけはご法度だ。「飛ばない、曲がる、ラインが出ない、の3悪は球に近く立ち、こわごわと腕を縮めたスイングです。いまの欠点をなぞるだけのスイングでは夢がついえるだけです」

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。81歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。