驚異のエージシューター田中菊雄の世界50 武藤一彦のコラム─ゴルフはミスのゲームだからこそ反面教師が必要だ、エージシュートというスコアにこだわり、体型に似たプレーヤーと同じスイングを目指す


 ゴルフはミスのゲーム、どんな名手もミスをするが、ツアーでも、強い人ほどピンチに強くパーにまとめる確率が高い。プロの場合はアンダーパーの世界なのであまりミスのゲームという表現はふさわしくないが、一般アマの世界では失敗があたり前、どんなうまい人でもミスはつきものだ。そんなところから同伴競技者の一人を必ず反面教師と決め、そこから学ぼうと決めた田中さんのラウンドには学ぶところが多い。

 

 田中さんのラウンドを見ると確固とした一貫性があることに気が付く。同伴競技者にシングルハンデの息子さんや甥を必ずと言っていいほど帯同すると、若者たちには白ティーではなく一つ後ろのティーから打たせ、自分は白ティーを使う。最近は女子の浪崎由里子プロが一緒だが、プロは白ティー、同じところから回る。これには意味がある。
 同伴競技者を反面教師にそのミスの傾向やパターンから学ぶ田中さんの事は前回書いたが、プロや上級者と一緒の時は、もちろん反面教師は彼ら、彼女らである。なぜなら、エージシューター田中さんのラウンドはエージシュートを目指す競技会。反面教師と決めたライバルとの真剣勝負だ。良いプレーを盗み、ミスプレーからいかに立て直すかを見極めなければならない。田中さんが白ティーというのはエージシュートのヤーデージの基本が白、レギュラーティに置いていることはすでに述べた。

 

同伴プレーヤーは反面教師。良いも悪いも教えてくれる(田中さんと浪岡プロ)

同伴プレーヤーは反面教師。良いも悪いも教えてくれる(田中さんと浪岡プロ)

 そんな田中さんだが、壮年となった息子たちには厳しい。白より距離のあるブルーティーに追いやるとはっきりという「若いんだからドライバーが飛ぶのは当たり前。それで俺と同じティーからやって勝ったといわれてはたまらない。飛ぶという若さだけの特技だけで勝っても将来のためにならない。後ろのティーで親父を負かすぐらいでないとだめだ。これは教育だ」-女子プロに関しては男子の白ティーは女子ツアーのヤードエージと同じこともあって50歳下だが同じ白ティー。孫世代と女性には甘い。

 

 反面教師とは別に、自分の体型と似たゴルファーも田中さんには先生である。175センチ、65キロ。手足が長くやせ形の理想体型。
 22歳で東京に出てくるまでは島根県松江の漁師。6男1女、7人兄弟の5番目、中学を出ると兄たちに連れられ隠岐の島まで4時間をかけ漁に出た。「バランスをとり、魚を取ったのが、傾斜のスポーツのゴルフに役立った」と笑うが、あながち否定できない。島根県人会きってのゴルフの名手は4つの会社で400人の従業員を抱えるグループの会長だ。羽川豊、江連忠プロと親交があるが、体型と無関係ではない。

 

 エージシューター田中さんは羽川プロからは「ティーアップした球をアイアンで払い打ちしっかりフィニッシュを取るインサイドアウトのスイング」を伝授されている。60歳の時だ。
 江連プロには「年を取ったらフックスタンスが基本だ」と超極端の”田中スイング“にお墨付きをもらった。72歳だった。同じタイプのトッププロからアドバイスをもらい自らに暗示をかけ、磨き上げて今がある。体型と同タイプに学べ。大事なことのようだ。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。82歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。