桃子の3季ぶりV支えた、王貞治氏の恩師との猛練習


18番、バーディーパットを沈め優勝を決めた上田桃子は力強く拳を突き上げる(カメラ・石田 順平)

18番、バーディーパットを沈め優勝を決めた上田桃子は力強く拳を突き上げる(カメラ・石田 順平)

 ◆女子プロゴルフツアー 中京テレビ・ブリヂストンレディス最終日(21日、愛知・中京GC石野C)

 1打差2位から出た上田桃子(30)=かんぽ生命=が8バーディー、1ボギーの65で回り、通算16アンダーで、14年11月以来3季ぶりに涙のツアー通算12勝目を飾った。今年未勝利なら引退覚悟でシーズンに臨んでいたことを明かし、プレーオフ(PO)で敗れた4月の地元・熊本開催のKKT杯バンテリンレディスの借りを返した。12年ぶり出場の宮里藍(31)=サントリー=がベストスコア64で11アンダー6位。

 最終18番、ピン左8メートルのエッジから上田が狙った“バーディーパット”は一直線にカップに吸い込まれた。右手を突き上げ「優勝は近いようで遠かった」と3季ぶりVに涙を流して喜んだ。大会史上最多3日間で2万4882人のギャラリーも、待望の復活Vだった。

 1か月前の悪夢を振り払った。被災地を勇気づけようと意気込んだ地元大会。18番、80センチのパットを外して2打差を追いつかれると、POで西山ゆかり(34)に敗戦。「熊本で勝てずダメージが大きかった」。今月上旬までせきぜんそくに悩まされ、母・八重子さん(67)が「救急車を呼ぼうかと思った」と言うほど体調を崩した。

 その一方、熊本で負けて涙した帰りの車中。テレビ中継をつけ、あえて敗戦のシーンを目に焼き付けた。「絶対に同じ失敗は繰り返さないように」。不屈の闘争心でリベンジVを引き寄せた。

 今年初め、辻村明志コーチ(41)らチームのメンバーに「今年勝てなければゴルフを辞めようと思う」と宣言。悲壮な決意の裏には、昨年12月に亡くなった元巨人打撃コーチで師匠と仰いだ荒川博氏(享年86)との猛練習がある。通算868本塁打のソフトバンク・王貞治会長(77)を育てた恩師から、約半年間指導を受けた。

 「1、2時間しか眠れず(不調だった)パットの素振りをしていた」という前日(20日)深夜。不安で辻村コーチに電話をすると、荒川氏が生前書いた日記の画像をLINEで送ってもらった。「良く練習できている」と精神力を褒める内容だった。30分もたないと言われる吐くほど厳しい練習に3時間耐えたことを思い出し「これだけ練習したんだから」と迷いが消えた。

 長かった道のりの中、ショットメーカーとしての自負は誰よりも強い。「次は2勝目」。この日のようにパットが決まれば、勝ちまくる時代が必ず来る。(岩原 正幸)

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