◆男子プロゴルフツアー 東建ホームメイトカップ第3日(14日、三重・東建多度CC名古屋=7081ヤード、パー71)
熊本市出身で4位から出た重永亜斗夢(あとむ、29)=ホームテック=が8バーディー、ボギーなしでこの日のベストスコア63をマークし、通算14アンダーで単独首位に浮上した。熊本地震から2年のこの日は、選手会長の石川遼(26)=カシオ=の発案で全選手が熊本県花のリンドウをモチーフにしたピンバッジをつけてプレー。「いい報告をしたい」と、故郷に初Vを届けることを誓った。首位から出た石川は72で10アンダーの2位に後退。
熊本に届けとばかりに、重永が躍動した。名前の「亜斗夢」は、手塚治虫さんの人気漫画「鉄腕アトム」に由来する。主人公のように勇敢なプレーでベストスコアの63をたたき出し、単独首位に浮上。「パットがよく入った」。16番で8メートルを決めると、花粉症のため着けているマスクの下から笑みがのぞいた。17番まで4連続バーディーと、終盤に“十万馬力”を発揮した。
国内開幕戦前の9日、復興半ばの熊本城に心を痛めた。城内にある武将・加藤清正が主祭神の加藤神社を訪れ、恒例の必勝祈願を行った。地震の傷痕を目の当たりにして、「がれきは転がりっぱなし。修復工事をしているけど悲惨な状態」と、ショックを受けた。一方で、1年前は「(5歳と2歳の)娘たちが少しの揺れで敏感になる」と心配していたが、「今は大丈夫」と少しずつ明るさを取り戻している。
この日は石川が主導して全選手、キャディー、大会関係者が熊本県花のリンドウをモチーフにした紫色のピンバッジを着けて哀悼の意を表した。キャップに着けた重永は、「うれしい」と感謝。2016年9月には石川を誘い、熊本・菊陽町の小学校を訪問した。「また一緒に行ってもらいたい」と、支援活動を継続するつもりだ。
2位に4打差をつけた自身4度目の最終日最終組は、通算31勝の片山、同14勝の石川との優勝争い。同じく最終日最終組で4差を追った16年は4位だった。「いい報告をしたい」。悲願の初優勝で、被災地を勇気づける。(岩原 正幸)