驚異のエージシューター田中菊雄の世界84 武藤一彦のコラム


 2兎を追うもの1兎をも得ずといわれるが、田中さん好調である。
 ここのところ田中さんとはご無沙汰している。クラブ対抗の本戦出場を目指し代表チーム内では代表権争いが終盤を迎え激しさを増している。12人の代表チーム枠には入ったが、大会に出場するのは6人だけ。5月21日の大会直前まで厳しい代表権争いのラウンドが毎週末、行なわれているからだ。
 初夏のこの季節、例年ならエージシュートをめざす田中さんとは、必ずラウンドをするのが恒例だったが今年は4月9日にラウンドして以来、すでに1か月、ゴルフどころか、メール連絡も途絶えた。
 こちらとしてはお聞きしたいことはヤマほどあるのだが、競技に集中してほしいと思い連絡を絶っている。晴れの代表選手となれば、クラブ対抗の歴史に燦然と輝く、83歳の最高齢プレーヤーの誕生となる。主催の関東ゴルフ連盟でもその動向を固唾をのんで注目していると聞いた。

 

 田中さんは72歳の時、クラブ対抗代表チーム入りしたが、その時は試合には出場できなかった。以来、12年ぶりにめぐってきたチャンス。「この年で、(チャンスがまたきて)驚いた。これもエージシュートを目指してやってきた日頃の取り組みのおかげ。こうなったら晴れて6人の代表選手入りしたい」と大張り切り。
 72歳の時もチーム史上最高齢代表と話題を集めたが、今回はその記録を大幅に上回った。エージシュートは自らに課した新たなゴルフへの挑戦。そこにクラブ対抗チーム入り、という思いもしない伝統の競技生活が向こうからやってきた。「競技ゴルフを卒業、エージシュートにいきがいを求めていたら、ゴルフの方から、お前さん、どれだけやれるかやってごらんと、また課題を突き付けられた。がんばってみたい。がんばろうと受け止めています。」いま勝負の時だ。

 

 クラブ対抗への代表選手争いはチーム内の厳粛な行事。その結果は大会直前まで公表されない。チームによっては大会前日に代表選手発表というところもあるが、田中さんの東京よみうりCCは5月21日、東京地区予選(桜ケ丘CC)の4、5日前になる予定だ。

 

 エージシュート回数は連休明けの5月7日現在、292回に達している。83歳の誕生日を3月3日に迎えて以来、2か月余で17回を数えた。82歳の時、田中さんはエージシュートを90回やっているが、83歳の今年は早くも17回、昨年と比べると1か月近い早いぺースである。驚異のエージシューターはクラブ対抗とエージシュート、2兎を追うもの1兎をも得ず、といわれるが、好調一途である。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。83歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。