【日本S主役は初V男】〈6〉木下裕太“気弱なヤンキー系”が勝負強さ発揮


 ◆木下 裕太(初出場)32歳 フリー=マイナビABC選手権優勝=

 “気弱なヤンキー”は初優勝を成し遂げトッププロの仲間入りを果たしても、なお弱気だ。

 プロ11年目で初出場。会場の東京よみうりCCは未体験だ。「テレビでしか見たことない。有名な18番パー3のグリーンの傾斜は実際、もっとすごいんでしょうね。不安ですよ」と恐縮した表情で話した。

 茶髪で細まゆ毛。見た目はヤンキー系だが、中身は正反対。「僕、気が弱いんです。見た目だけでも偽らないとゴルフをやっていられないので」。ただ、いざとなれば勝負強い。マイナビABC選手権で川村昌弘(25)との激闘を制したことで証明された。

 最強ゴルファー決定戦。ジュニア時代、千葉市の北谷津ゴルフガーデンで一緒に腕を磨いた池田勇太(32)、市原弘大(36)との対決を楽しみにしている。だが晴れ舞台を見てほしい人はもういない。北谷津で多くの選手を育てた千葉晃さん(享年73)が8月に亡くなった。池田は「デカユウタ」、木下は「チビユウタ」と呼ばれていた。「今年、弘大と僕が初めて勝つことができた。千葉さん、喜んでくれていると思います」と感慨深げに語った。

 東京よみうりCCは、近くで生まれ育った千葉さんのお気に入りのコースだった。きっと教え子たちの戦いを空の上から見守っている。恥ずかしい戦いはできない。(竹内 達朗)

 ◆木下 裕太(きのした・ゆうた)1986年5月10日、千葉市生まれ。32歳。8歳からゴルフを始め、2005年に泉高から日大へ進学。06年に日本アマで8強。3年時の07年に中退しプロ転向。賞金ランクは昨年の83位が最高で今季初めて賞金シードを獲得した。家族は両親、兄、姉。172センチ、72キロ。

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