◆報知新聞社主催男子プロゴルフツアー今季最終戦日本シリーズJTカップ第3日(1日、東京よみうりCC=7023ヤード、パー70)
4打差2位からスタートした出水田大二郎(25)=TOSS=は3バーディー、4ボギーの71とスコアを落とし、通算3アンダーで5位に後退したが、首位との差は3打に縮まり、大会史上13人目の初出場初優勝の可能性を残した。出水田を小学生時代に指導した女子プロ横峯さくら(32)の父・良郎氏(58)によると、5年前のオフの練習ラウンドではさくらに負けたという。女子プロより弱かった男子プロは今季、急成長し、8月にRIZAP KBCオーガスタで初優勝。シーズン最終戦で一気にメジャーの頂点を狙う。
Y・E・ヤン(46)=NOW ON=と黄重坤(26)=フリー=の韓国勢と、出水田と同じく初出場初Vを狙う堀川未来夢(みくむ、25)=Wave Energy=が通算6アンダーで首位に並ぶ。
今大会のドライバー平均飛距離は300・50ヤードでランク2位。25歳の新鋭、出水田はスケールの大きなゴルフを披露した。6番パー5では第1打を304ヤードかっ飛ばし、第2打はグリーン手前カラーまで運んだ。パターでのイーグルトライは惜しくも外れたが、楽々のバーディー。2位から5位に順位は下げたが、首位との差は4打から3打に縮め、大会史上13人目の初出場初優勝のチャンスをつなぎとめた。「最終日は前半から飛ばして攻めていきたい。3打差はチャンスあると思う」と出水田は表情を引き締めて話した。
「松山英樹に似ているよね」。出水田のプレーを初めて見る多くのギャラリーが異口同音につぶやく。
181センチ、80キロの松山に対し、出水田は183センチ、83キロ。ほぼ同じ体格を持ち、同じ住友ゴム工業のスリクソンブランドのクラブ、帽子、ウエアを使用。シルエットはそっくりだ。
出水田自身、日本最強ゴルファーの松山を意識している。松山が1年ぶりに日本ツアーに参戦した11月の三井住友VISA太平洋マスターズでは練習場で隣打席に陣取った。「すぐ近くで松山さんのいいところを盗もうと見させてもらいました。すべてにおいて全く足りないが、これから少しでも近づきたい」と向上心を見せた。
今季、念願のツアー初優勝を果たしたが、数年まではどん底に沈んでいた。鹿児島・樟南高卒業後の2011年にプロ転向。翌12年には19歳で下部ツアーで優勝したが、その後、低迷。「慢心していた」と当時を振り返る。13年のオフ、宮崎のゴルフ場で幼少時の師匠の横峯良郎さん、姉弟子にあたる女子プロのさくらと練習ラウンドを行った。「同じティーグラウンドで回って、大二郎はさくらに負けていた。その頃、さくらは絶好調だったし」と良郎さんは証言する。
14年、ひとり暮らしをしていた宮崎から鹿児島の実家へ戻り、地道なトレーニングと練習で再起。女子プロに負けていた出水田は5年の年月を経て、日本男子ゴルフ最高峰のひとつ、日本シリーズJTカップの優勝争いに加わる選手に成長した。「もともと潜在能力は高いし、真面目だし、頭もいい。大二郎は日本のトップに立つ可能性があると思う」と良郎さんはかつての教え子に大きな期待を寄せる。
「今年最後、悔いのないようにプレーしたい」と出水田はきっぱり言う。薩摩隼人の心意気に注目だ。(竹内 達朗)