◆女子プロゴルフツアー今季メジャー第1戦・ワールドレディスサロンパスカップ最終日(12日、茨城・茨城GC東C=6560ヤード、パー72)
首位から出た1998年度生まれ「黄金世代」の渋野日向子(RSK山陽放送)が4バーディー、3ボギーの71で回り通算12アンダー。大会史上最年少の20歳178日で、令和最初のメジャー制覇&ツアー初優勝を飾った。海外勢のメジャー連勝を「5」で止め、黄金世代では6人目の優勝。賞金ランクは2位に躍進し、8月のAIG全英女子オープンの出場権獲得も有力となった。
アマ時代に実績のない黄金世代の“雑草”がメジャーで大輪の花を咲かせた。最終18番。渋野は30センチのウィニングパットを沈めると、泣きながら笑った。「だんだんうれしさがこみ上げてきた。生まれてきてから一番うれしい」。同世代で親友の大里桃子らからウォーターシャワーで祝福された。「令和元年感はまだないけど、メジャー(優勝者)も日本人は久々…。私で良かったんでしょうか?」と、無邪気に首をかしげた。前週の勝みなみに続き、黄金世代が連勝だ。
自身初の最終日最終組。緊張のあまり1番で左へ曲げて、連続ボギーなしが38で止まった。ぺと首位に並んで迎えた16番パー4は、中央に大木がそびえるこの日の最難関ホール。第1打を狙い通りにフェアウェー左に運ぶと、左足下がりの第2打をピン左8メートルへ。ぺは第2打を右の林へ曲げるなどダブルボギー。自身はパーセーブで2打差をつけ勝負を決めた。
強風の中、5番で10メートルのバーディーパットを沈めるなど、今季平均パット数(パーオン時)1・7563で1位の力を発揮した。17年秋から青木翔コーチ(34)の指導を仰ぎ、苦手克服に挑んだ。毎日9ホールの“パットラウンド”は、1番の1メートル弱から始まり最終9番では4~5メートルまで徐々に距離を伸ばす。1ホールで2回以上ミスをしたら1番に戻る。始めた当初は3時間を要したが、現在は30分で終えるまでに上達。青木コーチは「やり続けてきたことが、ようやく実を結んできた」とたたえた。
ショットの球筋も変わった。腕が長い渋野に、上体を低く構えることでミート力が増すハンドダウンの構えを指導。「右に左に荒れていたけど安定した」と渋野。師匠は教え子の晴れ舞台に涙をぬぐった。
地元・岡山市の体操教室で指導する母・伸子さん(51)は仕事の都合で歓喜の瞬間に立ち会えなかった。だが、速報や録画放送で確認し「本当に我が子なのかな…。こうして頑張る姿を見せてくれることが何よりもプレゼントです」と孝行娘に感謝した。
今季目標は初シードだったが、メジャー優勝で3年シードを獲得。賞金ランクは2位へ躍進し、5月末までの同5位以内に与えられる全英切符も有力になった。「え? シード? え? 全英? 初耳なんですけどぉ~」と天然ぶりを発揮しながら「でも出てみたい」と言い切った。令和初&黄金世代初となる賞金女王にも「ここまできたら、取ってみたい」と名乗りを上げた。(宮下 京香)
◆渋野 日向子(しぶの・ひなこ)1998年11月15日、岡山市生まれ。20歳。8歳でゴルフを始め、小学時代はスポーツ少年団でソフトボール選手。岡山・作陽高を出て昨年7月、2度目の受験となったプロテストで合格。昨年は下部のステップアップツアーが主戦場だった。165センチ、62キロ。血液型AB。家族は両親と姉、妹。