◆報知新聞社後援 男子プロゴルフツアーメジャー第2戦第87回日本プロ選手権 第3日(7日、鹿児島・いぶすきGC=7150ヤード、パー70)
九州南部の豪雨の影響で順延されていた第3、最終ラウンド(R)の36ホールが行われ、4打差6位で最終Rを出た石川遼(27)=カシオ=が5バーディー、1ボギーの66と猛追。通算13アンダーで並んだ黄重坤(ハン・ジュンゴン、韓国)とのプレーオフ(PO)1ホール目で劇的なイーグルを奪って制し、2016年8月以来のツアー通算15勝目を史上最年少で飾った。令和&選手会長初勝利に歓喜の涙を流した。12月の日本シリーズJTカップ(報知新聞社主催)出場権と5年シードも獲得した。
4メートルのパットがカップに吸い込まれると大きくバンザイ、そして右拳を強く握り、両手を広げて雄たけびを何度も上げた。この日37ホール目、18番パー5でのPO最初のホール。極限の緊張の中、石川がドライバーを豪快に振り抜くと、右のカート道で跳ねて300ヤード越えのビッグドライブとなった。奇跡的なイーグル。「最後のパットは今までの優勝の中でも一番興奮したかもしれない。信じられない」。うれし涙を流した。
サッカーのC・ロナウドのようなド派手ガッツポーズに、前回Vから3年分の喜びが表れた。「今週、この地方は(豪雨で)大変な1週間でしたし、試合をやるからには盛り上げないといけない。諦めずに自分と向き合ってきて良かった。72、73ホール目は何年ぶりかにいいドライバーが打てました」と、振り返った。
七夕の真夏日に起伏のあるコース。難条件の中、浮き沈みが激しい“劇場型ゴルフ”だった。朝からの第3Rはアイアンショットが不調。4番ボギー、5番ダブルボギー、6番も8アイアンの第1打をラフへ入れダボ。11、12番もボギーとし、この時点で首位ノリスと最大の7打差に離された。
「あと20ホール(以上)も回るのが苦痛というか、落ちるところまで落ちるなという感じ」と、最悪の心境になりかけた。だが、「ボギーは流れが悪いからではなく、良いショットを打ってないからで、まずは良いショットを打てるように頑張ろう」と切り替えた。第3R終盤、最終Rでじわじわと追い上げると、同じ最終組の黄が17番、池ポチャのダボで首位に並んだ。「何かが起きるんじゃないかなと思っていました」。勝負を捨てない気持ちが大逆転につながった。
初優勝した12年前のような“最終日36ホール決戦”を制した。ドライバー不振も、「自分が気持ちよくスイングする中にゴールがある」と、完全脱却の手応えをつかめた。15年日本シリーズJTカップに続くメジャー2勝目。5年シード獲得に、「はぁ~、うれしい。正直、今年までしかシードがないと、頭をよぎる時もあった」と明かした。
世界ランクは日本勢17番手の300位だが、地元・埼玉で開催の20年東京五輪に向け、「代表に入りたい。これでワンチャンスつかみにいけるかな」と意欲。米再挑戦についても、「今の自分のゴルフができればすごく楽しみ。世界の選手が何をやっているかを基準にしていきたい」。そして10年ぶり2度目の賞金王も。夢は一気に広がった。(榎本 友一)
◆石川の初優勝 2007年5月のマンシングウェアKSBカップ(岡山・東児が丘マリンヒルズGC)は第1Rが強風で中止に。最終日は41人で決勝Rの36ホールを実施した。アマチュアの石川は第3Rを69で9位に浮上すると、最終Rは66で通算12アンダーとし、7打差23位から大逆転優勝。36ホールのプレー時間を確保するため第3R、最終Rは同じ組のままプレー。優勝争いの重圧を感じることもなく、15歳245日のツアー史上最年少Vを飾った。