◆女子プロゴルフツアー サマンサタバサレディース 第1日(19日、茨城・イーグルポイントGC=6601ヤード、パー72)
自身の年齢以下のスコアで回るエージシュートを456回も達成しているトップアマチュアの田中菊雄さん(84)が“ツアー史上最高齢”(推定)でキャディーを務めた。ゴルフの指導を受けている浪崎由里子(39)=アップフロントエージェンシー=のキャディーバッグを手引きカートで運び、“先生”をサポート。日本女子プロゴルフ協会の関係者は「キャディーの年齢は正確な記録として残っていないが、84歳のキャディーは聞いたことがない」とツアー史上最高齢キャディーの可能性が大きいとする見解を示した。今季ツアー初参戦の浪崎は2バーディー、4ボギー、1ダブルボギーの76で90位と出遅れたが、田中さんは「明日(20日)は優勝争いするとこまで盛り返しますよ」と元気に話した。小祝さくら(21)=ニトリ=が6バーディー、ボギーなしの66で回り、首位に立った。
84歳でプロツアーのキャディーを務めた田中さんは、ただ者ではない。プロを含めてゴルファーの夢と言われるエージシュートを456回も記録している。71歳の時に70で回ったのを最初に、77歳までに計10回。79歳で54回に伸ばすと、80歳で104回に到達した。ラウンドは常にノータッチ、完全ホールアウト。記録は全てコースの証明付きだ。「年間約200ラウンドしています。84歳になった今は、そのうち半分ほどがエージシュートですね」と田中さんはサラリと話す。
気力、体力ともに充実している84歳の新たな挑戦がプロツアーのキャディーだった。「浪崎さんに懇願してキャディーをやらせてもらいました。同組のプロにも迷惑をかけないように一生懸命やりました。暑いなんて言ってられませんよ」。気温28・5度、湿度80%の蒸し暑い条件の中、元気に手引きカートでキャディーバッグを運んだ。
90位と出遅れた浪崎に田中さんは明るく言葉をかけた。「明日は優勝争いするところまで盛り返しますよ。最終日(21日)には優勝をサポートします」と激励。田中さんの大健闘に浪崎も奮起するしかない。「3回ほどライン読みをしてもらって助けられた。明日、イーブンまで戻し、予選を通過して、3日間、田中さんにキャディーをしてもらえるように頑張ります」と浪崎は笑顔で話した。
田中さんは、今大会の直前の15日もラウンドして76。456回目のエージシュートを達成したばかり。「キャディーをして勉強させてもらっています。また、プレーしたくなりました。大会が終わった翌々日にはラウンドの予定が入っています。楽しみです」。経済的な余裕があり、気力、体力が満ちあふれている。84歳、驚異のエージシューターは全ゴルファーの“理想”だ。
◆田中 菊雄(たなか・きくお)1935年3月3日、島根・松江市生まれ。84歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員約400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは2006年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。ゴルフジャーナリストの武藤一彦氏が田中さんのゴルフ人生を記した「驚異のエージシューター 田中菊雄」が来月中に出版される。