驚異のエージシューター田中菊雄の世界116 武藤一彦のコラムー関東グランドシニア選手権連日のエージシュート


 関東ゴルフ連盟主催の「関東グランドシニア選手権」は5月30、31日の両日、栃木県足利市の東松苑GC(6439ヤード、パー72)で70歳以上のシニアプレーヤー137人が参加。36ホールで争われ、われらが田中名人は初日、81、最終日83と2日連続のエージシュートを達成、78位に食い込んだ。最終日、優勝争いは151打で並んだ4人のプレーオフに持ち込まれ79歳の延田政弘さん(米原)が優勝。秋の全日本大会に上位52人が出場を決めた。エージシュートは2日間で6人、9個がマークされ表彰式で優勝はじめトップ10入り選手らと共に特別表彰された。

 

 第1ラウンド81、第2ラウンド83。田中さんは大健闘。「ドライバーは若い選手と引けを取らずに飛んで自信を持った。願わくば、トップ52位以内に入って秋の日本グランドシニア選手権に出場できればと頑張ったが、及ばなかった。練習ラウンドも含めエージシュートが3回も出た、いい大会だった」と収穫を喜んだ。
 日本アマを頂点にジュニアはじめ30歳以上のミッドアマ、さらにシニア、今回のグランドシニアと年齢区分による選手権が行われる日本のアマチュアゴルフ界。「その最高峰の舞台は刺激になった」という。
 第1ラウンド、76歳の加藤昌弘さん(青梅)が37,34の71、エージシュートに5アンダーで全体の首位に立つ快挙をやってのけた。さらに田中さんの1歳上、最年長85歳の高橋孝一さん(アスレチック・ガーデン)は77、エージシュートに8アンダーで20位。田中さんも負けじと、81のエージシュートで62位につけて存在感があった。70歳以上をもって出場資格を持つグランドシニアの”つわものたち“は初日6人、最終日にはこのうち3人が2日連続エージシュートを達成、計9個のエージシュートをたたき出した。

 

 「大会は81歳の時、予選を81のエージシュートを出して以来」という田中さんは5月20日の公式練習日にも77で回っており、このコースでは3ラウンドすべてエージシュートという快挙。85歳の高橋孝一さんは表彰式であいさつに立ち「でも最終日には86をたたいた、これが私の実力です」と謙遜(けんそん)した。エージシュートはこれまで「130回を越える」といい、田中さんにとってはいい目標、ライバルの出現となった。

 

 開催コースの東松苑GCは平成元年創立、中島常幸の父、巌氏の設計。最終日には中島プロ始め、末弟の和也プロ、次弟の同コース・代表取締役の篤志氏も訪れ熱戦を見守った。ジュニア時代から数え日本と冠の付く大会8冠、日本ツアー59勝、シニア5勝、中島常幸プロも64歳、そろそろエージシューターと、水をむけると「いや無理、無理、この元気を維持する自信は僕にはありません」と右手をひらひらさせて及び腰、「でもこの元気は見習わないといけませんね」と眼鏡越しの目はきらりと光らせていた。
 「かつては数年に一つ出るか出ないかのエージシュートだが、ここ数年で大量生産の時代に入ったようです。高齢化社会が叫ばれるが、シニアパワーは年々加速して元気さを増している」と嶋田憲人・関東連盟事務局長は分析した。シニアパワーがはじけ、田中さんが「今日で通算445回」とエージシュートキャリアを明かすと、会場に歓喜のざわめきが漂った。令和元年、最初の公式戦のすがすがしいひとコマと受け止めた。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。84歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。