驚異のエージシューター田中菊雄の世界117 武藤一彦のコラムーけがそして復活


 エージシュートは7月25日現在、457回に達した。順調そうに見えるが、いろいろなことが次々と起こった。6月の中頃だ。コーチの浪崎由里子プロが女子ツアー「サマンサタバサ・トーナメント」(6月19、20、21日、茨城・イーグルポイントGC)に主催者推薦で出場がきまり、田中さん、「それならキャディーは私がをやります」と大張り切り。早速、コースに出かけ、下見のラウンドをするなど盛り上がった。この時は下見なので自分もクラブを握りラウンドした。ところが、その直後、田中さんの右ひざに激痛が襲った。病院に行くと炎症が起きて医者はゴルフを禁止令。歩くのも不自由し治療からの帰りは杖を突き、家族も会社も騒然となったものだ。

 

 幸い、痛みは2日間で取れた。するとかねて計画していた毎年恒例の“釧路遠征”を2泊3日、3ラウンドプレーに出かけたというから驚きだ。81歳の時から毎年通い続け3年間で3回もエージシュートをやっている4年目の釧路CC。雨にたたられ2日間はプレーできず、帰る当日のラストラウンドを78、エージシュートに6アンダーと完全復活、4回目を達成したのは驚きだった。

 

 「バックスイングを深く大きく取ろうと右足のつま先を外に開いたのが悪く、ひざの内側に負担がかかった。時々痛みが出る持病だが、大したことではありません。おかげでいい休養になりました」。1度はあきらめかけたキャディーは、「だれが辞めるといいました?」と涼しい顔、さらりと受け流すと6月15日に帰宅すると、その翌日の火曜日には浪崎プロともどもサマンサタバサの開かれる茨城・イーグルポイントコース入り、キャディーとして練習ラウンドをこなしたのだった。

 

 「浪崎由里子」と背中に選手名が大書されたポンチョ姿の84歳とその先生を強める38歳の女子プロは、すぐ好奇の目迎えられ、そのコンビは大会直前のほほえましい話題。インターネット、スポーツ紙の恰好の話題。「ツアー競技で84歳は世界最高齢キャディー」とあっという間にツアー会場に広がった。
 記者に囲まれ取材を受けた田中さんは「浪崎プロに私が懇願し無理を言った。250ヤードのドライバーショットをこともなげに打つ女子のトッププレーヤーの世界をロープの内側から見てみたかった。プロにはわがままを言っておきながら心配をかけた。優勝争いできるよう誠心誠意,キャディーをやらしていただく」と張り切るのだった。

 


 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。84歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。