日本初開催の米男子プロゴルフツアー、ZOZOチャンピオンシップ(千葉・習志野CC)が24日に開幕する。7月のメジャー、日本プロ選手権で3年ぶりの復活優勝を飾るなど「今季日本ツアー賞金ランク上位」の資格で出場する石川遼(28)=カシオ=は、17年8月以来の米ツアー参戦。歴史的一戦を前にスポーツ報知のインタビューに応じ、日本男子6人目となる米ツアー制覇や来年の東京五輪に向けた思いを語った。(取材&構成・榎本 友一、岩原 正幸)
―約2年ぶりの米ツアー参戦。目標は。
「緊張も不安もある。一番知りたいのは、今の自分の現在地。思い切って『当たって砕けろ』の精神で、持っているものを全力で出し切る。最高の準備をして、最大限のパフォーマンスを出せるように頑張るだけ。それによって現在地が分かる。どこら辺にいるのだろう、それに関しては楽しみでしかない」
―日本初開催の米男子ツアーはチケットも早々に完売と注目度は高い。賞金総額975万ドル(約10億4832万円)、優勝175万ドル(約1億8816万円)で日本開催大会では史上最高額。選手会長としては。
「夢みたいな気持ち。日本でやるということで一段と盛り上がると思いますし、タイガー・ウッズが出るか出ないかというのは大きな違い。彼がマスターズで勝って復活して、その時に日本で初開催される素晴らしい巡り合わせ。ここまで話を現実にしてくれたスポンサーの方々に感謝したい。ZOZOさんは日本を代表する企業の1つ。新しいことに取り組んで、新しいシステムを作り出している企業。お金もたくさんかかると思うけど、選手の思いをかなえてくれた。感謝しています」
―同組で回ってみたい選手は。
「タイガー、マキロイ、(松山)英樹のプレーは一緒に回って見てみたい。誰とやっても絶対に自分のためになる4日間になる。なるべく上の方でプレーして優勝争いに絡めれば、必ずそこには誰かがいる。大事なのは最終日に誰とどこで回るか」
―13年から計5年間、世界最高峰の米ツアーに参戦した。日本のファンに見てほしい米ツアーの魅力は。
「ドライバーとアイアンだと思います。飛ぶ選手は300ヤードをキャリーで越えてくる弾道。PGAでは、飛ばない選手ほどピンを狙う精度が高い。飛ぶ選手は短い番手でピンをデッドに狙ってくるし、飛んで曲がらない選手が本当に多い。そういう選手たちが習志野CC(7041ヤード、パー70)でどういうプレーをしてくるかも楽しみ」
―大会後の日本ゴルフ界の変化への期待は。
「何年(6年)も開催して頂けることが日本ゴルフファンにとっても楽しみであり、ジュニアゴルファーに与える影響も大きい。今はラグビーW杯が日本で開催されていて、その競技の人たちにとって最高の大会で盛り上がっている。ゴルフにとっては最高峰のツアー大会が開催されるので注目も高く、大会が持つ影響は大きい。将来、ここに出たい、と思う子供たちもいっぱいいると思う」
―今季の日本ツアーは出場13戦で2勝(トップ10入り5度)。プロ初の棄権が1度も予選落ちはなし。賞金ランク3位と好調なここまでを振り返って。
「ZOZOに出られる賞金ランク7位までに入りたい思いはあったけど、半信半疑の状態だった。自信を持ってシーズンインした感じではなかった。賞金シード(が確保できるかどうか)も7月の日本プロの直前まで頭にあった。日本プロで勝てたのが大きい」
―技術的に充実している点は。
「ドライバーとアイアン(ショット)が変わってきた。去年は精度が低く、今までゴルフをやってきた中で一番精彩を欠いていた。体や精神的な問題があったと思う。ドライバーの悩みが大き過ぎてアイアンもおろそかになっていた。第2打のアイアンショットが5~6メートルに寄ったら満足していた。試合で勝つ準備ではなく、とにかくドライバーに集中して取り組まざるを得ない状況だった。今年の始めにドライバーが良くなって、初めてアイアンの精度が低いことに気づいた。そこでしっかり明確な目標を立てて、取り組んできた」
―5月に腰痛で離脱後、器具を使ったウェートトレを解禁。後背部の筋肉などを鍛えて体重は約2キロ増。平均飛距離は昨季よりも20ヤード近く伸びて自身初の300ヤード超え。スイング面での変化は。
「言葉通りだけど、最後まで振り切ることができている。プロになってすぐ、高校生の頃の怖いものがなかった時と同じか、それよりも今は振れている。ヘッドスピードも(毎秒53メートルで)これまでで一番速い。振り切れているという自分の感覚と数字がマッチしている。2つの優勝があったからこそ、自分のやっていることがいい方向に行っているなって思える。結果はウソをつかない」
―日本男子4番手の世界ランク104位。東京五輪代表(来年6月末の日本勢2番手以内)への思いは。
「結構険しい道とは思います。最後まで分からない。(今季)残り(7)試合であと3勝くらいしていくゴルフができないと、賞金王にもふさわしくないし、五輪にも行けない。本当に残り試合で持っているものを全部出し切るだけ。五輪種目としてゴルフが見られる年。(初の)メダルを取るだけで、ゴルフ界に与える影響は大きい。自分が出場してメダルを目指せたら最高だと思う」
◆「TとM」ウェア大人気
石川は8月の長嶋茂雄招待セガサミーカップで、国内初披露となるキャロウェイ傘下の米国のサーフブランド「トラヴィスマシュー」のウェアでプレー。今季初めてサンバイザーではなく「TとM」のロゴ入りの帽子をかぶり「リラックス感があって、着心地も良かった」と自身初の2戦連続優勝を飾った。9月から国内で販売されると“石川効果”で大人気となっている。
◆ZOZOチャンピオンシップ
▽主催 株式会社ZOZO、米ツアー
▽共催 日本ゴルフツアー機構
▽コース 習志野CC(7041ヤード、パー70)
▽賞金 賞金総額975万ドル(約10億4832万円)、優勝175万ドル(約1億8816万円)で国内大会では史上最高額。日本ツアーへの賞金加算は50%
▽出場選手 78人。60人は米ツアーメンバーで前年実績によって決定(ウッズ、マキロイ、デー、松山英樹ら)。日本ツアーからは2週前の賞金ランク上位7人(石川遼、J・ジェーンワタナノンド、浅地洋佑、朴相賢、星野陸也、C・キム、S・ノリス)。10月のブリヂストンオープン上位3人(今平周吾、大槻智春、S・ハン)。主催者推薦(小平智、香妻陣一朗、堀川未来夢)
▽競技方法 予選カットなしの72ホールストロークプレー
◆ゴルフ東京五輪への道 男子は20年6月23日時点の世界ランクを基準に算定する五輪ポイント上位60人が出場権を獲得。〈1〉同ランク15位以内は各国・地域で最大4人〈2〉16位以下は〈1〉の有資格者を含み最大2人が出られる。男子は20年7月30日から4日間、埼玉・霞ケ関CCで72ホールストロークプレーの個人戦で競う。20日時点の世界ランクでは松山英樹が1番手の27位、今平周吾が2番手の52位で代表圏内。16年リオ五輪で日本男子は初出場して池田勇太が21位、片山晋呉が54位。
◆PGAツアー 1968年、全米プロゴルフ協会からツアーを運営するために独立して設立。75年に名称が「PGAツアー」となった。コミッショナーは17年に就任したジェイ・モナハン氏(米国)。19―20年シーズンは9月のミリタリー・トリビュート(米ウェストバージニア州オールドホワイトTPC)で開幕し、来年8月まで計49試合が行われる。4大メジャーのマスターズ、全米プロ、全米オープン、全英オープンも含まれる。