◆女子プロゴルフツアー LPGAツアー選手権リコー杯第2日(29日、宮崎・宮崎CC=6535ヤード、パー72)
賞金ランク3位の渋野日向子(21)=RSK山陽放送=は3バーディー、1ボギーと連日の70で回り通算4アンダー。前半は停滞したが、後半の連続バーディーで3打差3位を死守した。同首位の鈴木愛(25)=セールスフォース=、同2位の申ジエ(31)=韓国=はともに8打差の17位で、逆転で21歳16日の最年少賞金女王が見えてきた。鈴木は「違う人に優勝してもらうしか」と、他力での2年ぶり戴冠を願った。
逆転のミラクル賞金女王へ、渋野が底力を発揮した。後半の13番でバーディーを奪うと、14番は7メートルのバーディパットをねじ込んだ。第2日では大会史上最多となる5511人の観衆から拍手喝采を浴び、かつて日向(ひむか)と呼ばれた宮崎に“日向子スマイル”を咲かせた。
自身は単独2位以上が最低条件の中、70で3打差3位をキープ。鈴木、申が8打差17位とV争いから脱落しかけているため、奇跡を起こす確率が高まった。女王を争う3人で唯一上位に絡み「80点。この位置は(優勝に)望みがある」。初日(28日)は前夜に寝違えた影響で左首に不安を抱えながらのプレーだったが、既に回復し満足げだ。
前半は、4番で左ラフからの第2打を「“半シャンク”(クラブのフェースではなく軸に当たること)」する珍しいミスでボギーなど精彩を欠いた。9番の第1打が左の木に当たり、林ではなくラフに戻る幸運もあった。6位で折り返し、後半に向け「やったろー」とエンジンを加速。初日にイーグルを奪った11番では4オン1パットのパーにとどまり「なっさけねえ」と、奮起し流れを呼んだ。
28日夜には宮崎牛を堪能した。この日が「11・29(いい肉)の日」と知ると「そうか。今日は水炊きだけど。(今週は)チキン南蛮も地鶏も食べて満喫している。絶対太って帰る」とおどけた。第2Rの平均飛距離は260・5ヤードで2位と“肉パワー”で優勝争いでも踏ん張った。
5月にワールドレディス・サロンパスカップで初優勝した後、岡山に帰省し、ジュニア時代に腕を磨いた長船CCを訪れた。小学校低学年から約10年間書道を続け、初等師範(書道教室で指導できる腕前)の達筆で「賞金女王なります!」と色紙に記した。中学時代は男性と同じティーで歯が立たず何度も悔しい思いをしながら、高2の秋にクラブチャンピオンになった“原点の地”。9月の国内3勝目後に「賞金女王を狙います」と公言する約4か月も前に、本気で目標を定めていた。
最終戦の2週連続優勝で逆転女王となれば史上初。2007年上田桃子の21歳156日を更新する最年少女王は残り2日に懸かる。上位はここ2年未勝利のテレサ・ルー(台湾)、―サロンパスカップで競り勝ったペ・ソンウ(韓国)と、逆転は十分可能な状況にある。「ノンプレッシャーでやるのがいい。なるべく(女王は)考えないように頑張りたい」と自然体で挑む。(岩原 正幸)
◆渋野の逆境での強さ
▼7月・資生堂アネッサレディス最終日 残り4ホール時点で首位のイ・ミニョン(韓国)との4打差を追いついてプロ初のプレーオフを制す。
▼8月・AIG全英女子オープン最終日 3番で4パットのダブルボギー、8番もボギーで3位に後退したが、後半で5バーディーを奪い初出場で日本人42年ぶりのメジャー制覇。
▼9月・デサント東海クラシック最終日 首位と8打差の20位から8バーディーの“シンデレラ・チャージ”。ツアー自己ベストを2打更新する64で、ツアー史上2番目の大逆転優勝。