驚異のエージシューター田中菊雄の世界125 武藤一彦のコラムー緊急時を乗り切るエージシュートの効用


 新型コロナウイルス拡大がスポーツ界に深刻な打撃を与えている。東京五輪・パラリンピックは1年後に先送りとなった。ゴルフ界も世界最古のメジャー、全英オープンは中止、国内の男女ツアーは夏季まで開幕のめども立っていない。
 緊急事態宣言による外出自粛などの期間は1ヶ月。5月6日まで拡大するウイルスの前に人類はなす術もない。厳しい制限は副作用を伴い、社会活動は完全に冷え込んだ。世界は一体どうなってしまうのだろうと不安だ。

 

 だが、そんな中、わが、エージシュート名人の元気さはどうだ。
 エージシュートは4月6日現在、通算544回に達した。その日、ホームコースのよみうりGCで「田中菊雄エージシュート500回達成コンペ」が、家族ら18人が参加、名人は79のベスグロで544回目のエージシュートで自らを祝ったのである。

 

 500回目は昨年11月27日、東京よみうりCCで達成された。この日のコンペはその直後、計画され本来なら120人余が参加して華々しく行われることが決まっていたが、そこに降ってわいた“コロナウイルスの感染拡大。中止も検討したが、コースを借り上げてのイベント、コースへの配慮もあって家族と関係者だけが集まったという事情があった。当日は一般ゴルファーもプレーする中、コンペルームでお茶とケーキのささやかなお茶会となったことをあわせて記しておく。

 

 席上、あいさつに立った名人は2019年の足取りを振り返って、4月15日から5月8日まで19ラウンド連続エージシュート(プレーしなかった日は除く)と、5月5日、新潟・紫雲GCでマークした35,37の72のパープレーラウンドが自己の持つエージシュートアンダー記録12アンダーであることを報告した。
 「71歳のとき初めて70で周り72歳時を除き、以来85歳まで毎年エージシュートを達成できたことはひとえに皆様のおかげ。私のエージシュートを心から喜んでいただいたことが励みになりました」と感謝を述べたものである。
 さらに自らを支えたエピソードも披露した。同コースでは毎月1回、10数年続く「火曜会」という集まりに触れ、「この会で優勝6回は私が最多。ほかにベスグロ7回、ニアピン賞5回、アンダーパープレー6回、小波賞5回があります」と具体的データを上げて、「エージシュートという記録にこだわると、どんな記録でもおろそかにしなくなる。挑戦しゴルフに真摯に取り組む材料ならなんでも全力投入。ゴルフはいつも一生懸命やるものです」と自らの心意気を吐露するのだった。
 そこには日頃、なんでそんなにお上手なんですか?とだれからも聞かれる質問への答えがそこにある。名人は「毎日が真剣勝負。私を鼓舞してくれる目の前のことには全力でぶつかる。それがゴルフへの私の恩返しなのです」と言うのだ。

 

 拡散する感染症と対峙した緊急時の中で行うゴルフである。しかし、名人はそこを重々承知しながらやるべきことはしっかりとやると決め、その生き方に緩みないことを証明しようとしている。緊急時を乗り切る、スポーツマンとしての心意気がそこに潜んでいると思うが、どうだろう。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。85歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。