松山英樹、日本の悲願男子メジャー初Vへ、大会日本人最小スコア65で4差首位


◆米男子プロゴルフツアー メジャー21年初戦マスターズ第3日(10日、米ジョージア州オーガスタナショナルGC=7475ヤード、パー72)

 松山英樹(29)=LEXUS=が、日本男子悲願のメジャー初制覇に王手をかけた。3打差6位で出ると1イーグル、5バーディーの大会日本人最少スコア&この日のベストスコア65をマークし、通算11アンダーで後続に4打差をつけ単独首位に浮上。ショット、パットともにかみ合い、雷雨による1時間17分の中断にも気持ちは切れなかった。2位には13年全米オープン王者のジャスティン・ローズ(英国)ら4人が並んだ。

 鮮やかな花が色づくオーガスタの森に、松山への“恵みの雨”が降った。難易度の高い3ホール「アーメンコーナー」に入る11番だ。首位と2差4位で迎えた松山の第1打は右林へ大きくそれ「今週で一番悪いショット」だった。直後に雷雲接近で競技が中断。「これ以上悪いショットはないだろう」と開き直り、車中でスマホゲームをして気分転換。その1時間17分後、歴史的な快進撃が幕を開けた。

 再開地点で球がグリーンを狙える位置にあった幸運を生かした。雨でグリーンが軟らかくなり、果敢に得意のアイアンショットでピンを攻めた。カット気味に低く打った2打目を6メートルに乗せ、起死回生のバーディー。風のやんだ続く12番パー3は3メートルにつけて伸ばし、首位のローズに並んだ。

 圧巻は15番パー5だった。残り205ヤードから5アイアンでの2打目は「ほぼ完璧」。ピン右2メートルに2オンし、今大会3つ目のイーグルで単独首位に。16、17番もアイアンで1メートル、3メートルにつけて後続を突き放した。中断後8ホールで6つスコアを伸ばし、後半は大会記録まであと1打に迫る「30」の猛チャージ。“ムービング・サタデー”の主役を演じた。

 マスターズは幼少時から憧れた夢舞台だ。ウッズの優勝にテレビの前で夢中になり、アマチュアだった11年に初出場したメジャーで「一番勝ちたいメジャー」と公言してきた。過去84度の大会で、4割強は54ホールを終えて単独首位の選手が逃げ切り。4打以上リードした選手が逆転された例は4度のみ。しかも松山は、この日まで10R連続オーバーパーなしと好材料がそろう。伊澤利光(01年)、片山晋呉(09年)の4位が日本勢最高のマスターズで頂点を視界に捉えた。

 メジャーの最終日を首位で迎える日本人は1980年全米オープンの青木功以来2人目だ。メジャー通算33戦目の松山は「初めてなので不思議な感じはあると思うけれど、できる準備をして迎えたい」と練習場で日が暮れる午後8時頃まで黙々とパットを転がした。17年8月の全米プロ選手権では最終日の10番まで単独首位に立つも5位。「勝てる人になりたい」と悔し涙に暮れた。あれから4年。苦楽を知る29歳がゴルフの祭典で日本男子の悲願を実らせる。

 ◆松山が達成した記録

 ▽日本人歴代最多3度目のベストスコア 伊澤(01年2Rの66、同最終Rの67)、丸山茂樹(02年最終Rの67)、松山(15年最終Rの66、17年最終R67、21年3Rの65)。ベストスコア達成者にはクリスタル製の花瓶が贈られる。

 ▽日本人最多1大会3イーグル 2001年大会の伊澤利光(1R13番、3R15番、最終R15番)、15年の松山(2R2番、3R8番、最終R13番)に続く史上2人目で通算3度目。3日連続も15年の自身に続き2度目。イーグル達成回数分のクリスタル製ペアグラスが贈られる。

 ◆松山の最終日首位スタートでの逃げ切りV 13年6月の国内ツアー、ダイヤモンドカップで初めて記録。米ツアーでは通算3勝目となった16年10月のHSBCチャンピオンズで初の逃げ切りV。最終日を首位で迎えるのは昨年8月の米ツアー、BMW選手権(3位)以来で、日米で過去11度のうち7度、逃げ切り優勝している。

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