◆米男子プロゴルフツアー メジャー第2戦 全米プロ選手権 最終日(23日、米サウスカロライナ州キアワアイランドリゾート=7876ヤード、パー72)
首位で出た50歳のフィル・ミケルソン(米国)が5バーディー、6ボギーの73で回り、通算6アンダーで逃げ切った。50代のメジャー優勝は史上初で、ジュリアス・ボロス(米国)の最年長記録(48歳)を更新した。16年ぶり2度目の大会制覇でメジャー6勝目、ツアー45勝目。6月の全米オープン(トーリーパインズGC南C)で史上6人目の生涯グランドスラム(メジャー4冠)に挑む。マスターズ王者の松山英樹(29)=LEXUS=は72で通算1オーバーの23位で、メジャー2連勝はならなかった。
ツアー屈指の人気を誇るレジェンドが異様な熱気に包まれた。ミケルソンが最終18番の第2打をピン右5メートルにつけると、制止を振り切った観衆がフェアウェーになだれ込み“主役”を取り囲んだ。まるで18年ツアー選手権でライバルのタイガー・ウッズが5年ぶりの優勝を遂げた時と同じ風景。その中心でサングラスで渋く決めた50歳は「こんな経験は初めて」とお得意の“サムアップポーズ”で大歓声に応えた。1万人が上限のギャラリーが何重にも取り囲んだグリーン。2パットに収め、喝采を浴びながら「この勝利は格別」とキャディーの弟と抱き合った。
昨年6月に50歳となり、シニアツアーにも出て勝った。主戦場の米ツアーでは19年2月を最後に勝利から遠ざかり、世界ランクは今年3月、28年ぶりに3桁に。衰えを感じ、再起に向けて肉体改造に励み8キロ前後減量。今季ツアーでの平均飛距離は48位の302・5ヤードで5季前から9ヤード伸びた。
久しぶりの優勝争いで成果を見せた。砂地からウェッジで放り込んだ5番や、3メートルのパットを沈めた7番では得意の小技が光った。そしてパー5の16番では、この日全体1位の飛距離366ヤードのビッグドライブ。同組の飛ばし屋ケプカを圧倒した。「50歳になっても勝てることが、他の選手の励みになればと願う」。メジャー史上最長のモンスターコースで、最年長記録を更新した意義を口にした。
ウッズが19年マスターズで11年ぶりのメジャー優勝を果たした姿を見て、再びメジャーの頂点への渇望を取り戻した。自動車事故を起こし、リハビリ中のウッズからこの日、ツイッターで「50歳で再び勝つ姿は本当に素晴らしい刺激になった。おめでとう」と祝福された。6月の全米オープンで、ウッズら5人しかいない生涯グランドスラムの偉業に挑む。「もしかするとこれが最後の勝利かもしれない。でも勢いが続く可能性もある」。既に殿堂入りしている左打ちの名手は貪欲に戦い続ける。