イケメンからイクメンに 矢野東が13年ぶりVへ「もう家族と仕事は同じ重さ」


1番でティーショットを放った矢野東

1番でティーショットを放った矢野東

◆男子プロゴルフツアー ANAオープン 第3日(18日、北海道・札幌GC輪厚C=7063ヤード、パー72)

 2008年大会王者の矢野東(44)=ラキール=が1打差3位で出て6バーディー、1ボギーの67をマーク。通算13アンダーで2打差2位へ浮上した。シード落ち、右肘手術の苦難を乗り越えた2児の父は成熟。13年ぶりの大会2勝目&ツアー歴代4番目のブランク優勝となる08年10月(ブリヂストンオープン)以来の通算4勝目へ無欲で挑む。ベストスコア64をたたき出した大槻智春(31)=真清創設=が、15アンダーの単独首位で19年5月以来の2勝目に王手をかけた。

 酸いも甘いも知るベテランの矢野が、5年ぶりの最終日最終組にたどり着いた。台風接近による荒天予報のため、早朝に開始された「ムービング・サタデー」。5番で5メートル、14番で3メートルを沈めるなどパットがさえて67。2打差の2位に「今日はスコアが良かっただけで内容はひどかった。この状況はあまり想定していませんでしたね」と正直な胸の内を笑顔で明かした。

 プロ22年目の44歳。もともとはショットメーカーだが「優勝争いになって、大事にするというか。ダウンスイングで手と体が近づき過ぎてしまって。クラブが上から鋭角に入り過ぎる悪い癖が出て、いいタイミングで打てていなかった」と苦笑いで自己分析した。好成績選手が招かれる記者会見場に足を踏み入れると「久しぶりだなぁ」と深くしわの刻まれた頬を緩めた。17年6月に「内視鏡で5本穴を開けた」と痛めていた右肘を手術。地道にリハビリとトレーニングを重ねてきた。

 17年から3季連続でシードから陥落した。西麻布にゴルフスタジオを開設し、YouTubeなども始めた。かつて「ツアー屈指のイケメン」といわれた男は「イクメン」へと変わった。長女・七楓(ななか)ちゃん(3)、長男・新(あらた)君(1)が誕生。遠征先から2人にテレビ電話するのが日課になったが「いつ帰ってくるの?」などと「いつも最後は泣かれてつらい」という。「僕の生活はもう100%がゴルフじゃない。ツアーと家族、仕事は同じ重さ」と環境の変化を語る。肩の力も抜けた。

 20年最終予選会を1位通過し、今年の出場権を獲得。前週までの11戦で、Sansan・KBCオーガスタで4位に入るなど、賞金ランク65位でシード返り咲きも射程に入る。「明日も目標は4アンダー(68)。まぁ、のんびりね。流れさえ来れば何とかなる」と矢野。自然体のパパは経験を力に、08年10月以来の頂点へと向かう。(榎本 友一)

 ◆矢野 東(やの・あずま)1977年7月6日、群馬・富岡市生まれ。44歳。10歳からゴルフを始め、富岡高から日大に進んで98年に関東アマ、朝日杯全日本学生で優勝。2000年にプロ転向し、05年アサヒ緑健よみうりメモリアルで初優勝。08年はANAオープンとブリヂストンオープンを制し、賞金ランク自己最高の2位。ツアー通算3勝。13年に椎間板ヘルニアを発症し、14年に12年守ってきた賞金シードを喪失。176センチ、73キロ。家族は妻と1女1男。

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