
1番、ティーショットを放つ藤田寛之
◆男子プロゴルフツアー ダンロップフェニックス 第1日(18日、宮崎・フェニックスCC=7042ヤード、パー71)
ツアー通算18勝で52歳の藤田寛之(葛城GC)が5バーディー、ボギーなしの2021年自己最少スコア66をマーク。首位と3打差の5アンダーの6位と好スタートを切った。
「奇跡が起きました。自分でもちょっとよくわからないスコアです。昨日部屋で鏡の前でシャドウスイングをしていて、ちゃんとテークバックをひねろう、と思ってやっていただけなんですけど」とプロ30年目の大ベテランは報道陣の前でほおを緩めた。
今季獲得賞金は、1070万5047円で賞金ランク68位。ショットに苦しみ、65位までのシード権確保に向け、残り3戦でギリギリの戦いが続く。「ずっと自分の中に左への恐怖がしみついているみたいで。スイングを色々やってみても練習場では良くても、本番ではまらない状態がずっと続いていて」。21年は20戦で12度の予選落ちと12年賞金王は、歴代2位の24季連続シード死守へかつてない苦戦を強いられている。
前週の三井住友VISA太平洋マスターズで予選落ち。同大会の前後で師匠の芹澤信雄の指導をあおいだ。「スイングの話を。わざわざ抗原検査まで受けてまで時間を作って下さって。何とか恩返しをしたいなと思っているんですけど」と感謝した。さらに、万が一シード落ちした場合、来年に向けてどうするかの相談もしたという。「(12月の)最終予選に行くか、生涯獲得賞金ランク25位以内の資格を行使するか」―。同年代の手嶋多一、深堀圭一郎、近藤智弘らにも相談した。
この日は、1番で2打目をピタリと寄せてバーディー発進。3番ではグリーン右バンカー横の木の枝に当たり、ピンそばにつく幸運も味方して伸ばした。「神様が『もうちょっと頑張りなさい』と言ってご褒美をくれたのかな、と」。16番では5Mを沈めてバーディーを奪った。
シード圏内の賞金ランク65位とは74万9259円差だ。「1年でも長く続けたい。あきらめることが一番嫌。なかなか前向きになれない中でトレーニングしたり、練習したり。体もきついけど、常に一生懸命やりたい。準備をして戦っている自分が幸せ。この年でこの舞台でやれる喜びもあるし、応援してくれる人もいるのでその声に応えたい」と不屈の闘志を燃やす。一方で、「シニアツアーにもっと出てほしい」という声もあるそうで「一体どうしたらいいのか。難しい年頃ですね」と苦笑いする。
福岡市出身。今大会は九州では8月以来の有観客開催だ。この日は平日にもかかわらず、1000人を超える観客が詰めかけた。「ここにきて、試合の雰囲気がやっといつもの雰囲気に。ギャラリーが入って色々と声をかけてもらうと、そういうところでやってきた身としてはすごく焦点が合う。ずっとスイートスポットに当たっていなかったのが、やっと芯を食った感じというか。うれしいですよね」とプロゴルファーとしての醍醐味を改めてかみしめている。百戦錬磨のレジェンドが残り3日間、拍手を背にシード確保へ死力を振り絞る。