太平洋・江南コースのメジャー 第83回日本プロ選手権 ―伝統と名勝負がいっぱいの大会を探る


 日本で最古のプロゴルフトーナメント、「日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯」は日本ツアーの3戦目として5月14日から埼玉県の太平洋クラブ江南コースで行われる。1926年に第1回大会、今回83回目の伝統の大会はコースを名匠・加藤俊輔設計の江南コースにゆだね、何をみせようとしているのか。話題を追った。

 伝統の大会、第1回大会が行われたのは大正15年、6人のプロが参加して36ホールを争うとプレーオフにもつれ込んだ。大阪・茨木CCを舞台に始まったドラマは、プレーオフを5日後に二人だけで行ったが、これがすごい。プレーオフもまた36ホールの長丁場の争いだった。当時欧米、特にアメリカではすでにツアーがあり、それに習ったわけだが、このプレーオフは今に残る日本ツアーの最長記録である。

優勝したのは23歳の宮本留吉、プロ第1号、福井覚治を下した。翌年の日本プロもプレーオフにもつれ込み、中上数一が宮本を下した。このときは18ホールだったが、長丁場のプレーオフ記録としては史上2番目である。大差記録は1930年、兵庫・宝塚の第5回大会で村木章が2位に19打差という“ぶっちぎり優勝”がある。

 舞台、江南(こうなん)は7053ヤード、パー71。芝の伸び切らない初夏はラフの脅威はなく高低差もない。だが、林間を縫うようにたどるドッグレッグホール、ちりばめられるクリークや池がハザードとなりタフだ。03年9月の日本女子プロ選手権ではドライバーの正確さを誇る優勝者、不動裕理ですら11アンダーしか出なかった。男子のメジャーは今回が初。中でもアウト4番パー4は、高低差7メートル。見た目は穏やかだが、セカンドの距離感がつかみにくい難ホールだ。優勝争いのキーホールが始まる15番はパー5をパー4に使う。16番はティーを29ヤード下げてタフなホールにした。さらに17番パー3は珍しいグリーン前にアルプスのようなマウンド、その先に旗竿のフラッグがおいで、おいでをするように誘うブラインドのパー3だ。日本を代表する名設計家・加藤俊輔氏の思いもよらない奇策だ。18番は単なる池越えにあらず。ティーショットを右にミスすると2打目が難しくなるスリリングなホールだ。

 大会2連覇を狙う手嶋多一、賞金王の小田孔明、熟練の片山晋吾、宮本勝昌、若手の小平智そして岩田寛に期待する。

 手嶋は昨年、兵庫・ゴールデンバレーの日本プロで7年ぶり7勝目をあげ、01年、日本オープンに次ぎ公式戦を勝った。15歳で日本オープン最年少予選突破した天才少年は46歳の働き盛りを迎えた。小田は賞金王の昨年2勝を挙げ通算8勝もマスターズの招待状は来なかった。メジャーのタイトルがないと世界へアピールできない。今年もうひと花咲かせなさい、といわれていると受け取って、気をとりなおして頑張ってほしい、心から期待する。

 片山、宮本は茨城・水城校の同期生、42歳は日本ツアーの中心だ。27勝の片山は永久シード権を持ち賞金王5回と頂点をきわめた。だが、そのために“働く気持ち”をなくしていたが、ここにきて元気を取り戻した。女子プロの飯島茜のカムバック優勝をコーチとしてアシストするなど生きがいも見つけた。日本プロ3度目の優勝がさらなる生きがいに通じるはずだ。宮本は昨年末の日本シリーズ優勝、公式戦2連勝にチャンス。ここを勝って3戦後のメジャー日本ツアー選手権へつなげれば日本ツアー、久々の快挙となる。

 若手の小平は米ツアーの石川、松山の2年上。いま日本の若手の頂点にいる25歳。ここらで波に乗って賞金王を取っていい素材だ。岩田はこの冬をアジアンツアーで過ごした。日本ツアーの開幕が遅く試合勘がないのが選手たちの悩みだが、海外で調節した。やる気が先見となって仕上がり感がある。小平と同様の期待感をかけている。がんばってほしい。

 コースは自然の観客席が要所にあり、やんやの拍手と声援が選手と観客に一体感をもたらすはず。初夏の週末を見るゴルフで過ごす格好のパラダイスをおたのしみあれ。