「WGCキャデラックマッチプレー」は世界ランキングトップのロリー・マキロイ(北アイルランド)が圧倒的な強さで優勝した。ベスト16の準々決勝で対戦した松山英樹を6エンド5でくだすと準決勝のジム・ヒューリック(米)を22ホールに及ぶ延長戦で突き放した。地元アメリカのゲーリー・ウッドランドとの決勝戦は前半で4アップリード、12番で2アップまで詰め寄られたが、ドーミー・ホールの15番、相手ミスでポイントをあげ2ホールを残し4アップの4エンド2で下した。WGC、世界ゴルフ選手権シリーズの優勝は14年、「ブリヂストン招待選手権」以来2勝目、PGAツアー通算10勝目。うちメジャーはマスターズを除き4勝を挙げている25歳、ワールドランキング・トップランカーの快進撃はますます加速している。
飛距離300ヤードを越えるパワーヒッター同士の決勝戦。マキロイのパットがさえあっという間の4アップ。それは準々決勝の松山戦の“速攻”をほうふつさせた。ウッドランドが11番で初めてバーディーで3ダウンと挽回、12番の299ヤードのパー4をワンオンするバーディーで2ダウンと詰め寄り面白くなりかけたが、13番で互いにバンカーに入れたあとマキロイがボギー、ウッドランドは1メートルを入れれば1ポイント差というチャンスだったが、外した。勝負の岐路だった。がっかりしたウッドランドはその後、精彩なくマキロイが逃げ切った。
昨年まで2月に行われていた大会は冠スポンサーを自動車メーカーにかえ世界ランク上位64人のエリート大会。コースをサンフランシスコの名門TPCハーディングパークに移した。09年のプレジデンツカップの開催で知られるが30メートルを越える巨木にセパレートされたコースはゴルフ発祥の頃の試合方式マッチプレーとあいまって、楽しかった。出場64人を4人一組、16グループに分け18ホールのマッチプレーによるリーグ戦を行い1位選手16人による勝ち抜き戦というあたらしいフォーマットの試合形式も新鮮味があった。
松山はケビン・ナとメモリアルの再戦を制しベスト16
松山は第16組でアメリカのレビー、オランダのルイテン、そして昨年のメモリアルトーナメントのプレーオフの相手、韓国系アメリカ人のケビン・ナとの”再戦“を撃破してベスト16入りは見事だった。本当に力をつけたものだ。
このあとトーナメント1回戦のマキロイ戦は相手に長いバーディーパットを決められ、3メートルほどのパーパットを2回ほど惜しくも外し、あっという間に4ダウン。結局、取り返せないまま敗退した。しかし、その3日目の対戦はギャラリーを一手に引き付けて人気マッチとなった。
25歳のマキロイに22歳の松山の対戦は負けてもとも、でも何かおこるかもしれない、といった期待感で見ていて迫力があった。現地のファンも同じ心境だったのだろう。松山には温かい声援が送られた。
新機軸のマッチプレーの大会。09年のプレジデンツカップに次いでのマッチプレー戦を息もつかせず開催するあたり、アメリカツアーは柔軟性がある。マッチプレーの面白さ、スリリングな展開をどう伝えようかというビジョンがある。
コースを伝統のハーディングパークに移し試合形式を変えファンに 喜んでもらえるのはなにか?それを考え即座に実行に移す柔軟性が素晴らしい。
マッチプレーは最後まで、決勝戦と3位決定戦で長時間の戦い。テレビは間が持てず、中継が難しく営業面のリスクも高いと敬遠されている。スポンサーが付きにくいのもネックと聞く。
しかし、今回の試合はスピード感があっておもしろかった。すべてのマッチを18ホールにしたことに、“中身のうすさ”がないか?そんな懸念を大会前に持ったが、いらぬ心配だった。予選のリーグ戦、ベスト16以降のトーナメントと64人の選手をくまなく見ることが出来た。
いま、トーナメントはストロークプレーばかりで平板といわれるが、努力次第で変わることが今回実証できた。日本ツアーには、かつて日本プロマッチプレー選手権といういい大会があった。いまの変化のない、平板な流れを変えるべく、マッチプレー復活でカツを入れるというのはどうだろう。オリンピックもマッチ形式の団体戦、時代に合っていると思うが・・。