松山くん長期休養しなさい 武藤一彦のコラム


 米男子ツアーのプレーオフ最終戦、「ツアー選手権」は米ジョージア州アトランタのイーストレイクGCで最終ラウンドを行い、松山英樹(30)は3バーディー、3ボギーのイーブンパー70、通算13アンダーの11位に終わった。通算21位アンダーのローリー・マキロイ(33歳)が6打差から逆転優勝し年間王者となった。

 

 マスターズトーナメントの創始者、ボビー・ジョーンズ(米)が少年期から技を磨いたイーストレイクGCで行われた伝統の大会には今季の戦績に応じたトップ29人(1人欠場)が出場、この日の順位がシーズン総合順位となった。

 

 昨年のマスターズ王者として「世界一」が期待された松山は第3ラウンドで8バーディー、62のベストスコアで急上昇し臨んだ最終ラウンドだったが、大逆転はならなかった。「ショットもパットもうまくいかなかった」と不完全燃焼を恨んだ。「けがが多いシーズンだった。体調が良ければもう少し上位で戦えたかと思う。課題ですね」と遠くを見つめた。

 

 今季は、昨秋、日本開催のZOZO選手権、今年1月開催、ソニー・オープンの2勝と好スタートを切った。だが、3月に首から肩甲骨に痛みが走り、以来シーズン中、痛みを抱え続けた。7月には左手首を痛めツアー離脱、今シリーズの初戦も大会を棄権した。故障個所は左手首から左首と“日替わり”で訴え続け、シーズンを通して 結局、不安を与え続けた。

 

 若返り急な世界ツアー。30歳を迎え松山もベテランの世界へ。そんな中、シーズンを通した戦績をもとに選ばれる“限定”上位30人に名を連ねた。今シリーズ最多の9回連続出場は参加選手中ただ一人である。
 故障をかかえながら長いシーズンを戦い終えたが、2022―23年シーズンは9月半ばから始まる。オフシーズンはわずか半月しかない。すぐに始まる新シーズンが松山にとって負担でないと言い切れないのは故障を治す手段のないままに持ちこすことであろう。
 一球入魂といわれるが、その一打にかける思い入れの強さを松山のショットに見るのは筆者だけではないと思う。「どうしたらけがを少なくできるのか考えたい」ー今後を聞かれたとき、そんな答えが、松山の口からこの日も聞こえた。何かいい方法、手段はないのだろうか、松山はいま完全に途方に暮れている。

 

 そこでアドバイスである。いい方法がある。ジャック・ニクラウスを見習うといい。かつてニクラウスは試合数を減らし家族とともに故郷・オハイオで1年近く過ごしたものである。ツアーに再登場したとき100キロ近くあった体重は80キロに、すっきりした身体に。当時はやりの“兵隊カット”のショートヘアは、金髪の王子様カットに変身、ゴルフ界をアッと驚かせた。パーマー、プレーヤーとニクラウスがビッグスリーを形成して世界のゴルフ界は大きな変貌を遂げたのはその直後のことであった。やってごらん!

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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