タイガーはマスターズで復活できるか 武藤一彦のコラム


 47歳、タイガー・ウッズの米ツアー7か月ぶり公式戦の復帰戦は45位に終わった。第97回「ザ・ジェネシス招待」はカリフォルニア州の名門、リビエラCC(7322ヤード、パー71)で行われ、注目のタイガーは、予選ラインぎりぎりを低迷、上位食い込みを期待された最終日は3バーディー、5ボギーの73と下位を低迷した。優勝はスペインのジョン・ラームが69、通算17アンダーで今季3勝目、米ツアー通算10勝を挙げた。

 

 ツアー81勝のタイガー。交通事故の影響は隠せない。ツアーの実戦は昨年4月のマスターズ以来。自動車事故で負傷した右足をかばいながらの復帰戦は苦戦の連続となった。悪天候に予選ラウンドは第3日までずれ込むタフな大会となる中、予選をぎりぎりで通過、3日目にイーグルも出て68のビッグスコアもマーク”らしさ”が出たが、最終日、順位を下げた。

 

 「もう少しいいプレーができるかと期待していたのだが、いい結果につながらなかった。米ツアーに初めてデビューした16歳のときと同じようなミスが出た、成長していないね」とホールアウト後、苦笑い。

 

 コースに近いサイプレスの生まれ育ち。1992年、今大会にはウエスタン高校3年の時、ジュニアナンバーワンとしてアマで出場してその時はさすがの天才児も72,71で予選落ちしたが、今回、ながいブランクからのカムバックの舞台に選んだあたりに、少年時代の強い思い入れがあったかもしれない。注目の次戦に就いて聞かれ「メジャー中心に出ていきたい」といった。4月のマスターズに一点、勝負。背水の陣を敷いたと受け止めた。

 

 タイガーの故郷で行われた今大会は太平洋の丘陵地、名門リビエラCC。アップダウンがあり坂の下りを痛めた右足をかばいながら歩く姿は痛々しかった。体調はまだ、完全には戻っていないのは明らかだ。

 

 タイガーらしいシャープなアイアンの冴えに全盛時をほうふつさせるプレーに往年の冴えはある。たが、ドライバーショットはインパクト直後、右足で地をつかみヘッドを走らせる、タイガーならではのパワースイングはついに見られず、寂しかった。右かかとのインパクトの抑えが見られず、上体だけでフィニッシュに収まる姿は、かつての姿ではない。右足の故障は1年近くたった今もタイガーの復活を阻んでいる。マスターズまであと6週。タイガーのスイングは復活するのだろうか。

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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