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18番でウイニングパットを沈めて感極まる高橋彩華(カメラ・今西 淳)
◆女子プロゴルフツアー フジサンケイレディス 最終日(24日、静岡・川奈ホテルGC富士C=6447ヤード、パー71)
初日から首位の高橋彩華(23)=東芝=が5バーディー、3ボギーの69で回り、大会コース記録に並ぶ通算12アンダーで悲願の初優勝を完全Vで飾った。10度目の最終日最終組にも、元陸上十種競技日本王者でタレント・武井壮(48)の助言などを得て重圧をはねのけた。1998年度生まれの「黄金世代」として11人目の覇者は、賞金女王を目指すことを宣言した。2打差の2位は藤田さいき(36)=チェリーゴルフ=。5打差の3位は安田祐香(21)=NEC=ら3人。
50センチのウィニングパット。「何てことない距離なのに緊張した」。ボールがカップど真ん中に沈んだ瞬間、高橋は歓喜の涙を流した。
これまで9度の最終日最終組を経験した。そのうち首位は5度もあった。「出ないお化けを怖がっていた」。この日も負けパターンから始まった。1番の第1打を右のバンカーに入れてボギー。2番でも3メートルのパーパットをショートして連続ボギー。「また、お化けが出かかった。いつもの崩れる流れかな」と一瞬、弱気になったが、3番に向かう前、自身にこう言い聞かせた。
「逃げんじゃねー!」
3番パー4。残り150ヤードの第2打を6アイアンでピン1メートルにつけてバーディー。「怖がらずにピンに向かって打つことができた」と振り返る。4番パー5でも残り90ヤードの第3打を50度のウェッジで50センチに連続バーディー。流れを引き戻した。
雨が強まった後半、3つスコアを伸ばし、会場が川奈に移った05年以降、大会初の完全V。さらに大会コース記録に並ぶ12アンダーの見事な勝ちっぷりだった。
勝利の裏には「百獣の王」武井のアドバイスがあった。97年の陸上十種競技の覇者で現在は日本フェンシング協会会長。一時はプロゴルファーを目指したこともある武井と1月に雑誌の対談で対面。惜しいところで、優勝を逃し続けてきた高橋に武井は「その位置にいるだけですごいじゃん」と伝えたという。高橋は「自分は弱いと思っていたけど、視点が変わりました」と感謝する。自身の強さを信じられたことで変わることができた。
「最終日最終組で9度負けてきた中でも一番、悔しかったのは昨年のワールドレディスサロンパスカップです」と話す。単独首位で迎えた最終日に74とスコアを落とし、5位に終わった。2週間後、そのメジャーがやってくる。「1年前のリベンジをしたい」と言い切った。さらに「賞金女王、ツアーのチャンピオンになりたい」と続けた。
98年度生まれの「黄金世代」で前週のKKT杯バンテリンレディスで勝った植竹希望(サーフビバレッジ)に続き、11人目の優勝者となった。「お化け」を振り払った高橋は「百獣の王」を目指す。(竹内 達朗)