“強心臓”の岩井千怜が史上3人目の初優勝から2週連続V 追いつかれても動じず『ドラゴン桜』口ずさむ…担当記者が「見た」


18番、ウィニングパットを沈めて笑顔を見せる岩井千怜(カメラ・今西 淳)

18番、ウィニングパットを沈めて笑顔を見せる岩井千怜(カメラ・今西 淳)

◆女子プロゴルフツアー CATレディース 最終日(21日、神奈川・大箱根CC=6638ヤード、パー72)

 2打差の首位から出た岩井姉妹の妹・千怜(ちさと、20)=ホンダ=が通算13アンダーで、双子として初優勝した前週に続く、2週連続優勝を決めた。2バーディー、ボギーなしの70でまとめて逃げ切った。初Vからの2週連続制覇はルーキーでは初、ツアー史上では3人目となる快挙を最年少で達成。次戦のニトリレディス(北海道・小樽CC)で、前人未到の初Vからの3週連続制覇に挑む。担当の岩原正幸記者が、快進撃の真骨頂、20歳の強心臓ぶりを「見た」。

 パーなら優勝が決まる18番パー5、岩井千は15メートルに3オンと、嫌な距離を残した。傾斜を上って1・5メートルに寄せ、大一番の一打を前に「迷わず決めた所に打ち切ろう」と集中。外せばプレーオフになるパッティングで攻めた。前週は最終パットで手が震えたが「今週は大丈夫だった」。右手を突き上げるほど自信に満ちた一打だった。勢いよく転がったボールはカップを半回転した後、快音を響かせてストンと落ちた。

 今大会は3日間パーオン率85・19%(1位)とショット力が光ったが、この日のパット数は32など突出したスタッツはなかった。勝因を挙げるなら、怖いもの知らずの20歳の勢いと、最終ホールで攻めた強心臓だろう。重圧も苦にならない。「ファンの皆さんがいるだけで、ゴルフの内容も変わってくる。見られている方が好きで、すごく楽しい」。むしろ観衆の熱い視線がエネルギーになると言った。

 母・恵美子さん(47)は千怜の性格を「(双子の姉)明愛(あきえ)みたいに行動するというより慎重派。考えながらやるタイプ」というが、度胸の面では「中学3年の合唱コンクールで、クラスの中で千怜だけが笑って歌っていたんですよ」と明かす。

 前週の初優勝も「満足は全くしていなかった」と千怜。第2日(20日)後には、シーズン前半は後半戦の出場権を獲得しようとプレーに焦りが出ていたと分析し、「以前は奥に外してはいけない場面で、振り切れず手前に外したりしていたが、今は恐れず振り切ることができている」と優勝後の精神面の成長にうなずいた。

 8アンダーの猛チャージで追い上げた山下美夢有(21)=加賀電子=に12アンダーで並ばれ、13番グリーンで状況を確認した。本人は「1打リードすれば勝てる状況で、緊張してドキドキだった」と振り返ったが、16番では、人気ドラマ『ドラゴン桜』のテーマ曲を鼻歌で歌うメンタルの強さもあった。17番パー3で5メートルに運んだ6アイアンの第1打も「怖がらずに振り切れた」。

 初優勝からの2週連続Vは90年の西田智慧子、05年の表純子に続き、17年ぶり3人目の快挙。ルーキー初、最年少20歳47日での記録に「自分でもできるんだという気持ちが大きい」と胸を張った。25日開幕のニトリレディスでは、2007年の全美貞(韓国)、19年の鈴木愛に続く3週連続優勝、しかも初制覇からつなぐ史上初の大偉業に挑む。歴史を塗り替える可能性は十分ある。(岩原 正幸)

 ◆岩井千は年少4位の2週連続V 17年の畑岡奈紗(18歳261日)、04、05年と2度達成の宮里藍(19歳1日、19歳337日)に次ぐ記録。

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