浜松市出身で、浜名湖CC所属の内山大樹(23)がこのほど、PGA(日本プロゴルフ協会)資格認定最終プロテストに合格した。浜松開誠館高卒業後に研修生となり、4度目の挑戦でプロへの関門を突破。期待のホープが「スポーツ報知」のインタビューに応じ、今後の意気込みを語った。10月4日から浜松シーサイドGCで行われるファーストクォリファイングトーナメント(QT)に出場し、ツアー選手を目指していく。
4度目の挑戦で“壁”を越えた。8月末から9月上旬にかけて登別CC(北海道)で行われた最終プロテスト。内山は5オーバーの43位とラインギリギリで合格を勝ち取った。
「周囲にギリギリでも通ることが大切と言われてきた。うれしいです」
今後、ツアープレーヤーとして戦っていくためにはクォリファイングトーナメントを通過する必要がある。10月に控えるファーストQTは幸運にも地元開催だ。
「近くてラッキー(笑い)。一歩ずつ、段階を踏んで進んでいきたいと思います」
ゴルフとの出会いは小学生の時。父と観戦したヤマハレディースで興味を持ち、10歳からレッスンに通い始めた。
「賞金額に驚いて、家族に『俺が稼ぐわ』と豪語したらしいです(笑い)。土日も含め週4、5日練習しました」
小学校の卒業文集には『プロになる』と記した。浜松開誠館中からゴルフ部で活動。ただ2年時に右手首を痛め、3か月ほどゴルフから離れるうちにプロへの思いはしぼんでしまった。
「元からすごい成績を残していた訳でもなかったので…」
転機は高1から始めた浜名湖CCでのキャディーのバイト。現在も師事する並木一雄プロ(57)の指導を受け研修生の存在を知り、プロへの思いが再燃した。
「最初は全然(ゴルフに)関係ない所に就職しようと思っていたんです。でもやっぱり自分よりうまい人に教わって、周囲の環境にも恵まれていた」
高3のある日、挑戦したいと訴えたが、師匠の返事は「NO」。当時は体重60キロと細身で「10キロ増やさないと入れない」と一喝された。以来、目の色を変えた。
「自分が『食べられない』と思う(白米の)量をよそって食べることをノルマにした。全く興味がなかったプロテインも調べて、摂取するようにした」
数か月で6キロの増量に成功。晴れて研修生としての入社を認められた。アマとしては胸を張れる成績もスコアも残していない。朝は誰よりも早く出社し、帰りは誰より遅かった。業務をこなしながら練習を重ね、必死に食らいついた。
「早い時は朝5時に来て、帰りは夜7時半。ジュニアの時はフックだったんですけど、並木さんの教えに従ってフェードに変えました。すごい楽で攻めやすくなった。今は左に絶対いかない自信がある」
浜名湖CCも全面協力してくれた。クラブハウス周辺の練習場ではなく、コース内でバンカー、ラフ、林の中といった“実戦練習”を許可してくれたのだ。
「やればやるだけうまくなる環境をつくってくれた。並木さんの教えは『(打ちっ放しの)マットの上でやる時間があるなら、全部芝から練習しろ』。やっぱり芝感が違います。そういう練習を許可してくれるコースはなかなかないと思う」
練習の7割はアプローチに費やす。
「アプローチをうまくするためではなくて、ショットをうまくするためにアプローチをやる。つま先上がりも下がりも、左足下がりも上がりも、アプローチをやっておけばショットと同じ感覚で打てます」
入社時、プロを目指す県内の研修生が参加する研修会では「ビリ2」だった。昨年ついに1位を奪取。今年の最終プロテストへの推薦をもらえた。
「一年一年、ちょっとずつ成績も飛距離も伸びてきた。全然飛ばなかったドライバーも280ヤードまで伸びました」
プロテスト合格は、スタート地点に立ったに過ぎないことも理解している。
「まずは試合に出る。そして出続けるのがプロゴルファー。そのためにもシードを取って、ずっと第一線で戦いたいです」
妹の愛梨さん(20)も同じく研修生で、プロを目指している。
「妹の方が高校の時にヤマハレディースに出たり活躍していた。親も妹に期待してて、僕は悔しかった。今は逆転したし(笑い)、いい刺激になったと思います。将来的には河本きょうだい(※)のように優勝できたらいいですね」
※河本きょうだいは、姉の結(24)が19年のアクサレディス宮崎で初優勝。弟の力(22)も今年8月のSansan・KBCオーガスタを制し、国内男女日本人4組目のきょうだいVを達成した。
◆内山 大樹(うちやま・たいき)1999年6月16日、浜松市生まれ。23歳。10歳からゴルフを始め、浜松開誠館中、同高ではゴルフ部に所属。卒業後から浜名湖CCで研修生。得意クラブはサンドウェッジ。176センチ、72キロ。家族は両親と妹。